「ダンカン選手のフィジカルの強いインサイドアタックをいかに止めるかを意識している。そこが当たり出すと、今度は外のシュートも入りはじめるので、一番ディフェンスの良い選手をつけ、しっかりと今日も守ってくれた。もし、守れなかったらプランBやCなども用意していたが、そこを使わずに1on1で守ってくれた選手のがんばりのおかげ」
3ブロックを決めたリムプロテクターのヒースをはじめ、ダンカンに仕事をさせなかったことが勝利への方程式だった。
迷っても原点に立ち返ることができる「7つの言葉」
佐藤ヘッドコーチが、就任当初から選手たちに言い続けてきた7つの言葉がある。特にシーズン終盤となった今こそ、呪文のように唱えてきた。
「課題を乗り越えるために、7つの言葉の中のどれかが足りないことでうまくできなかったことにつながっていた。でも、その軸さえブレなければ、川崎が目指すバスケがしっかりと表現できている。それが、今シーズンのスローガンである『MOVE』につながっており、一番大事にしている。昨シーズンはそこを徹底しきれず、終盤にこの軸に対してフォーカスできなかったのが反省点でもあった。今はよりそこにフォーカスし、今シーズン積み上げてきた川崎の軸をこの終盤こそ徹底し続けることが一番の目標になっている」
佐藤ヘッドコーチが掲げる7つの言葉は、「Be Ready(準備する)」「Be Tough(強く戦う)」「Disrupt(相手のやりたいことをさせない)」「Dictate(自分たちのやりたいことに誘導する)」「Communication(コミュニケーションをとる)」「Competition(競争する)」「Keep Running(走り続ける)」。この言葉は選手やスタッフにとって大きな支えとなり、迷っても原点に立ち返ることができる。千葉の勝利に佐藤ヘッドコーチも手応えを実感していた。
「40分間遂行力の高い、強度の高い素晴らしい試合ができた。とどろきアリーナの雰囲気も最高だったし、選手とスタッフとともに、ファミリーの皆さんも一丸になって戦えたことでの勝利だった」
敗れた千葉だが、神がかった3ポイントシュートを決めた富樫は「出だしは良くなかったが、その後はチームとして練習してきたものを出せた部分もある」と言い、反省点ばかりではなかった。「このような強いチームとこの時期に対戦できることは、負けてはしまったがチャンピオンシップに向けてチームとして準備するためにも大事な試合だった」と目が覚める敗戦でもあった。
1週間前、宇都宮戦に敗れたとき、藤井祐眞は強度の足りなさを痛感し、すでにチャンピオンシップへ向けた戦いがはじまっていることに気付かされた。富樫も、「チャンピオンシップ前にインテンシティの高い試合をすることで良い準備になると思っています。残りの試合は強豪とばかりの対戦だが、そこで、さらに勝つことで勢いを持ってチャンピオンシップに臨めるように、そして東地区優勝に向かって行きたいです」と気持ちを切り替える。
すぐさま迎える週末の次戦、千葉は宇都宮へ乗り込み、川崎はホーム最終戦にA東京を迎え、チャンピオンシップと変わらぬ強度の高い熱戦がはじまっている。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE