ポイントガードとしてまだまだ発展途上段階の納見に対し、平岡ヘッドコーチは「綿貫のゲームコントロールやけっして体は大きくないがボールに対する執着やディフェンス、またチームのために献身的にプレーする部分を理解して欲しかった」。遠藤も同じであり、「トランジションバスケットではすごく良い部分を持っている選手だが、ハーフコートになるとまだまだスキルが足りない」と続け、期待値が高いからこそベンチで見て学び、成長を促す意図もあった。
平均約25分の出場時間を与えられている遠藤は、「ルーキーらしくアグレッシブにプレーすることは毎試合心がけています。自分のスピードは武器になっていると思っているので、そのスピードを活かしたプレーやドライブからのキックアウトパスなど通用するプレーも結構あり、そこをもっともっと伸ばしていけるようにしたいです」と手応えも実感している。
ブレることのない“新潟らしいバスケ”で勝利を目指す
現在5勝41敗であり、最後に勝利したのは2月6日の群馬クレインサンダーズ戦まで遡らねばならない。勝てない状況に対し、チームの士気を上げるのも「本当に難しい」と指揮官は吐露する。「正直なところを言えば、次シーズンのことを考えている選手もきっといると思う」と平岡ヘッドコーチは続け、この時期からすでに水面下で交渉が行われていることはこれまでの移籍選手が語ってきた。
それでも、平岡ヘッドコーチは「残り試合も少なくなってきたが、1試合でもブースターの皆さんに勝ち試合をお見せできるように、最後まで諦めずにがんばりたい」ともう一度チームをひとつにまとめる。大前提である「ひたむきにがんばる姿を見せる新潟らしいバスケ」だけはブレることなく、これまでもこれからも試合に臨んでいく。
「若い選手がすごく多いチームの中で、常に彼らには、たくさんの経験を積んで、たくさんのミスをして、必ず毎試合で得るものがなければならないと言って試合には送り出している。練習中は選手がチャレンジしたい部分とチームが求めることに対し、若干のズレが生じることもある。ストレスもあるとは思うがそこはガマンしてもらい、最後まで新潟らしく戦おう、と日々伝えている」
コンディション回復と全員の復帰が急がれるとともに、このままでは終われない。「毎試合同じようなミスが続いているので、ターンオーバーを減らして、チーム全員で同じ方向を向いてバスケットをしていけば、なんとか1勝できると思っています。その勝利に向かって、チーム全員でフォーカスして戦っていきたいです」という遠藤をはじめ、選手たちも諦めてはいない。
いくら点差が引き離されても、ベテランたちは気迫溢れるプレーを見せ、ロスコ・アレンはチームメイトを鼓舞し続ける。勝負が決まっても最後までボールを追いかけ、それに呼応するように、流しても良い時間帯に川崎もプレーし続けた。試合後、申し訳なさそうにチリジ・ネパウェは手を合わせ、ブースターに向かって頭を下げた。
勝利が遠い今シーズンだが、諦めずに戦う姿勢がブースターの胸に刻まれる。どうあがいてもチャンピオンシップへ行く道はもうないが、「来シーズンこそ期待したい」と思わせるプレーが大切であり、その小さな光を見つけるために会場へ足を運んでいる人もいるかもしれない。いくら気持ちを込めてプレーをしても、勝ち星にはつながらないもどかしいシーズンだが、自分を信じ、チームを信じて成長し続けていけば、きっと未来へとつながるはずだ。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE