「あの人にはオーラがある」、「あの人が放つオーラがすごい」。私たちが普段何気なく口にしている “オーラ” という言葉は生物が発散する霊的な放射物、エネルギーを意味するらしい。辞書には『それが転じて霊的な雰囲気、なんとなく感じる力、威圧感などを表す言葉となった』とある。今、なぜそんなことを調べてみたかというと、4年前、大倉颯太が東海大に入学した年に行ったルーキーの座談会を思い出したからだ。練習が終わった体育館の隅に集まった選手たちはまるで示し合わせたかのように「颯太のオーラはハンパない」と口にした。大倉とマッチアップした高校時代、「全力でディフェンスしても20点は取られた」という坂本聖芽(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が「あのころからオーラが目に見えるようだった」と言えば、「見える、見える、今でも見える!」と八村阿蓮(現・群馬クレインサンダーズ)が叫び、伊藤領の「ずっとまぶしいよねぇ」の言葉に全員が声を上げて笑った。冗談めいたやり取りのようでいて、そこから伝わってきたのは仲間たちの “本音”。そうだな。そのとおりだな。振り返れば、コートの上の大倉颯太はいつだってまぶしいオーラを放っていたような気がする。
1度好きになったらとことん打ち込む性格
石川県野々市市出身。男ばかり3人兄弟の次男として育った大倉を「子どものころはかなりやんちゃでしたね」と語るのは2つ違いの兄・龍之介(北陸学院高校→東海大→富士通)だ。「ただ、やんちゃと言っても悪いことをやるわけじゃなくて、自分が興味を持ったことはすぐやってみたくなる性格なんですね。全然悪気はないと思うんですが、結果的にそれが問題になって親はよく学校に呼び出されていたみたいです(笑)」。興味を持ったことは迷わずやる、好きになったことはとことん打ち込む。「そうです。まさにそれです。バスケットに対しても同じで、思えばそういう性格が、なんていうんでしょう。颯太の強みになっていったような気がしますね」。ミニバスのチームに入っていた兄の後を追いかけて、保育園の年長のときからコートを走っていたという大倉は群を抜く身体能力と集中力で誰もが一目置く選手へと成長していく。進んだ野々市市立布水中学では3年次に全国中学校大会優勝に輝き、多くの強豪高校から誘いの声がかかった。が、選択したのは地元石川県の北陸学院高校への進学。当時北陸学院の2年生だった龍之介はこう振り返る。「北陸学院のバスケットボール部は自分が入学する年に創設されたばかりの、いわばこれから歴史をつくっていくチーム。だから颯太に進路を相談されたとき、将来を考えたらもっとレベルが高い強豪校に行った方がいいんじゃないかという気持ちもあったんですが、最終的に決めるのは本人。高校で成長できるかどうかも自分次第なのだから『よく考えておまえが一番行きたいと思う高校を選べばいい』と伝えた記憶があります」。
大倉もそのときのことはよく覚えている。「兄が言う『自分が一番行きたいのはどこか?』を繰り返し考えてみて、自分はやっぱり北陸学院に行きたいと思ったんですね。理由は地元だから寮に入ったりしなくていいこと、仲がいい友だちと離れなくてもいいこと。なんか直接バスケと関係ないじゃんと言われそうですが、当時の自分にとっては大きな理由でした(笑)。もちろん石川県(の高校バスケ)を強くするチャンスだというところに惹かれたのもあります。自分たちの代を見渡したら阿蓮(八村・仙台大附属明成高校に進学)とか領(伊藤・開志国際高校に進学)とか結構全国に散らばっている感じがしたので、自分も地元で頑張ろうと。北陸学院を強くして全国大会に出場しようと決心しました」