ジョシュ・ダンカンにアクシデントがあった千葉に対し、横浜はサイズで有利となる。青木ヘッドコーチは「慌てずに、もう一度自分たちがやるべきことを徹底し続けられたこと。オフェンスでは自分たちが上回って攻められる場所に対し、共通理解を持ってプレーできた。終盤も集中力を切らすことなく戦ってくれたことで、なんとか耐え切れた」と勝因を挙げ、苦しみながらも大きな1勝をつかんだ。
千葉戦へ向け、「ターンオーバーからの失点とオフェンスリバウンドからセカンドチャンスポイントを簡単に与えないこと」にポイントを絞り、準備してきたことも奏功する。3月に敗れた試合でのターンオーバーからの失点は平均21.8点であり、それと比較すれば13点に抑えられている。サイズで有利になったこともあり、リバウンド数は53:35と18本も上回り、セカンドチャンスポイントも7点だけだった。準備してきたことを、40分間を通して遂行できたことが大きな勝因である。
千葉戦の勝利はチームのおかげ「これで満足したくない」河村勇輝
富樫vs河村の『ユウキ対決』に注目が集まったこの一戦。2人のスタッツを比べれば、得点では16点で富樫(河村6点)が、河村勇輝は12本のアシスト(富樫6本)でそれぞれ上回り、試合に対する効果を現すエフィシェンシー(EFF)はいずれも10と互角だった。しかし、20歳の河村が実際に対峙した肌感覚は、「やっぱりすごかった」と言うだけに留まる。この日のMVPに輝いたが、「試合の入りが全てでした。スタートで出た先輩方の絶対に負けないという気持ちやアグレッシブさを全面に出してくださって、ブースターの皆さんの力もそうですが、それがこの結果につながっただけ。本当にそこに尽きると思います」という河村の表情は曇ったままだった。だがコートに立っているときの得失点(+/-)はチームトップの+9(富樫+1)であり、間違いなく勝利へ勢いづけていた。
首位の千葉に一矢報いることができ、「チームを勝たせるポイントガードになる」という覚悟に対して手応えも感じられたかと問えば、「試合に勝ったときにうれしい気持ちもすごくありましたが、悔しさも半分半分が入り交じったような感情でした」と複雑な心境だった。
「この試合は自分が勝たせたというよりは、たくさんの先輩方が得点を決めてくださって、最後の最後でちょっと自分がレイアップを決めただけの話。そこまで積み上げてきた先輩方に勝たせてもらったという状況なので、この試合で自分の評価が上がるわけではないし、自分の中でもこれで満足したくない気持ちがある。フィールドゴールやターンオーバーなどは今後の課題でもあり、これからも日々努力していきたいです」
青木ヘッドコーチはロッカールームでの選手たちの態度を目の当たりにし、「彼ら自身がまだまだこんなものではないと思っている」と明かし、満足していないのは河村だけではなかった。「その成長が止まらないように、これからも選手たちとしっかり歩んで行きたい」と続け、一歩一歩階段を上っていくだけである。今週末はふたたびホームゲームが待っており、京都ハンナリーズと対戦する。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE