海の向こうでは『SWEET16』が出揃った。大量に得点が入るバスケは、サッカーと違って番狂わせが起こりにくいスポーツと言われる。だが、2回戦を終えた48試合中16回ものアップセット(番狂わせ)が起きた。“マーチマッドネス”と呼ばれるNBAよりも盛り上がるNCAAトーナメント(全米大学バスケットボール選手権)での話である。先週から開幕し、時差の関係で朝起きたときからその結果を見ては興奮し、午前中は仕事が手につかないこともしばしば。
NCAAは、アメリカ主要スポーツメディアが戦績を踏まえながらランキングしている。その順位によって番狂わせが生じ、バスケファンを熱狂させる仕掛けだ。本来は大学生同士の対戦であり、初対戦の場合も多く、何が起こるかは誰にも分からない。ドラフトもサラリーキャップもないが、それでも同条件で戦うプロ同士のBリーグだって、どこが勝ってもおかしくはない。
直近10試合で3勝7敗と勝ち星に恵まれない東地区9位の横浜ビー・コルセアーズ。対するは、2022年を迎えてからBリーグでは負け知らず、同首位に立つ千葉ジェッツは8連勝と上昇気流に乗っている。これらの戦績や印象により、横浜が千葉に勝つ確率は自ずと低く見積もられていたはずだ。しいて言えば、ホームコートアドバンテージに期待をするしかなかった。
「ホームって本当に良いもんですねぇ!」
勝っても負けても試合後はブースターへ挨拶するのが慣例であり、その多くは悔しい敗戦に頭を下げることが多かった。しかし、この日の青木勇人ヘッドコーチは弾むような声で、3千人を超える目撃者たちへ勝利を報告。誇らしげに、「選手たちを称えてください」と横に並んだ選手たちにスポットライトをあてた。
76-75。横浜にとって、千葉から勝利を挙げたのは実に5年ぶりのことである(※2017年2月4日72-70@横浜国際プール)。これによって順位も変動し、横浜は8位に浮上、千葉は2位となり、試合のなかったアルバルク東京に首位を明け渡す結果となった。
ターンオーバーからの失点とセカンドチャンスポイントを簡単に与えないこと
第1クォーターから確率良く5本の3ポイントシュート(83.3%)を決め、横浜が先手を取った。第2クォーターには一時19点差とし、50-34と横浜がリードして前半を終える。「ノーエナジー、ノーハッスル、ノーエクスキューション。これでは何をやっても相手に立ち向かうことはできない」という大野篤史ヘッドコーチのコメントが、不甲斐ない前半だったことを物語る。
しかし、バスケはいくらでもやり直しが効くスポーツであり、そこが醍醐味だ。前半はトータル40分のうちの20分間にしか過ぎない。「前半と後半で明らかにコート上の選手たちの動きが違った。それは気持ちの問題であり、勝ちたいという気持ちが前半は足りなかったです」と富樫勇樹は切り替えて後半に臨み、チームを引っ張っていく。千葉が本領を発揮すると、あっという間に点差が縮まる。第4クォーターが1分を過ぎた時点で、西村文男が同点のシュートを決め、60-60。千葉がゲームを振り出しに戻した。千葉の反撃を予想できてはいたが、「それを上回るエナジーや強烈なオフェンスを展開されてしまった」と青木ヘッドコーチは言い、劣勢に立たされていった。