Gravitational field of Fazekas(中編)より続く
ピックアンドロールはコンビプレーでありタッグマッチであり二人羽織である。
成功させるために必要なのはお互いの能力が高いレベルにあることと、呼吸が合っていること。
ピックアンドロール界における2000万パワーズとしてまず挙げられるジョン・ストックトンとカール・マローンは、それぞれがNBAの歴代通算アシスト数1位と歴代通算得点数3位の記録を持っている。
実力、コンビネーション、そして戦術が揃えば向かうところ敵なし。
ニック・ファジーカスがスクリーナーとして、Bリーグ最高レベルの実力を持っている事実は揺るぎない。
ではそんな彼が考える最高のユーザーとは、どんな選手なのだろうか。
「ツジ(辻直人・広島ドラゴンフライズ、元・川崎ブレイブサンダース)ですね。ツジは本当に優れたパッサーで、そして彼の下す状況判断はとても素晴らしい。ユーマ(藤井祐眞・川崎)もユーザーとしてどんどん上達してきていて良い判断ができるようになってきましたが、今のところ5、6年前のツジと僕とのピックアンドロールが相手にとっては最も守りづらかったのではないかと思っています。
総じて言えるのはやはりパスが上手で、かつシュート力のある選手はユーザーとして優れていると思います。このリーグの中でもそういった選手はいますが、その中でもトガシ(富樫勇樹・千葉ジェッツ)は良い状況判断をします。そしてもう一人印象的だったのは、ナミザト(並里成・琉球ゴールデンキングス )。彼はピックアンドロールに関する嗅覚がとても鋭くて、そしてとても素晴らしいパッサーです。彼は常に、効果的なパスを出すことをまず狙っていますが、同時にミドルレンジでの高いシュート能力も持ち合わせています。」
ツジーカス、という単語が巷を賑わせていたのを筆者が知ったのは、つい最近のことです。
逆の立場だったことがあるイシザキはもちろん、この二人鬱陶しいなって思ってました(いい意味で)。
そしてその優れたユーザーたちのパートナーとなる、スクリーナーにとって望ましい条件とはどのようなものなのか。
これについても、ファジーカスはこれまでの経験を踏まえて見解を語ってくれた。
「Bリーグに関して言えば、どちらかというとピックアンドポップをしてアウトサイドのシュートを確率よく決められるプレーヤーの方が守りづらいように思います。そういったプレーヤーはスペースを広く取ることができるので、ディフェンスの対応が難しくなります。もちろんピックアンドロールをして、ゴールに向かってくるタイプの良いプレーヤーも中にはいますが、リングの上でのプレーが多いNBAレベルに比べるとそこまでの脅威にはなっていないですね。NBAのプレーヤーは身体能力が別次元なので、ピックアンドロールのあとは空中戦になります。ロブパス(浮かせたパス、アリウープパス)をリングの上で受けてそこからダンクなりシュートに持っていかれるのを守るのはとても困難です。そういった理由から、高いレベルでの空中戦を展開できるNBAにおいてはピックした後ロールする方が有効ですが、Bリーグにはポップを得意としているプレーヤーが多くいて、そしてそれが効果的に機能している印象があります。」
リングの下、しかも地面スレスレでしかプレーした経験のない筆者にとっては想像を絶する世界である。
身体能力には恵まれていないかもしれないが、ファジーカスほど得点能力のある選手ですらプレーするのが難しいNBAとはどんな場所なのだろうか。
彼がNBAにいた頃はどんなプレースタイルだったのかも気になるところだ。