小豆沢で培われた恩返しの想い | アイシンアレイオンズ #6 長澤健司

ただ、これもBリーグファンの多くが知るところだが、長澤が今プレーしているアイシンは今シーズンを最後に活動終了することを開幕前に発表している。チーム初の日本人プロ契約選手として加入した長澤にとって、これは想定を超える事態だった。

「噂というか、いずれなくなるかもしれないということは聞いていたんですが、まさか今シーズンとは思っていなかった。衝撃というかビックリしました」

プロとして初めての移籍を経験し、気持ちも新たにシーズンを迎えようとした矢先にその後の身の振り方を考えなければならなくなったことは、何という運命のいたずらだろうか。しかし、そんな中でも長澤はチームのために今できることにフォーカスする。それは、長いキャリアで築き上げられたプロ意識の為せる業だ。

「エクセレンスに長くいたからこそそう思うんですが、応援し続けてくれている人に恩返しできればというのが一番です。僕自身が恩返しするというよりは、長くアレイオンズに在籍した選手が中心になって、入れてもらったばかりの僕はそこに少しでも力になれるようにと思っています。エクセレンスでは新型コロナウイルスの影響で無観客試合も経験しましたし、見てもらうことが当たり前ではないという環境でした。今もまだ続いているこの状況で、B3TVやSNS上で応援してくれる人にも何かを届けたいという想いが強いです」

そして、やはり長澤と長く共闘してきた横浜EX・石田剛規ヘッドコーチの言葉も紹介しておこう。常に冷静な石田HCの口ぶりはこのときも落ち着いたものだったが、NBDLで3連覇を達成し、Bリーグでの5シーズンも苦楽をともにしてきた “仲間” への想いは、その落ち着いた口ぶりによってさらに重みを感じさせる。

「エクセレンスというチームはいろんな選手が支えてくれました。彼らがいたからこそ、今までの優勝もあった。彼らがどこに行っても感謝の気持ちは変わりません。プロのバスケットボール選手として生きていくことはそう簡単なことではない。これからもこのチームのメンバーは変わっていくでしょうし、僕自身どういうキャリアを歩んでいくのかはわかりませんが、その中で彼らと過ごすことができたのは貴重ですし、今日こうして長澤たちを小豆沢に迎えて試合をすることができたのは本当に幸せなことだと感じます」