移籍市場の活発なBリーグは選手に限らずコーチも入れ替わりが激しく、勝負の世界の厳しさを感じさせるのは選手よりもむしろ、勝つか負けるかという誰の目にもわかりやすい結果が問われるヘッドコーチのほうだ。シーズン中に日本人選手を入れ替えるケースはごく稀だが、ヘッドコーチに関しては国籍に関係なく、シーズン途中でも容赦なく契約を解除されるという、実に酷な立場だ。
そんなHC交代劇は今シーズンも発生した。ブースターの間で最も話題になったのは青森ワッツとバンビシャス奈良。就任1シーズン目にもかかわらず青森を去った堀田剛司HCが、同じく就任1シーズン目のフェルナンド・カレロ・ヒルHCとの契約を解除した奈良に移籍し、代わってカレロHCが青森の新HCに就任。契約解除されたHCがそのシーズンのうちに他クラブのHCに招かれることも珍しいが、この両クラブは結果的にHC同士を時間差でトレードするような形になった。
ただ、シーズン途中にHC交代劇が発生したということは成績が思わしくないということ。今回のケースも、B2東西の最下位クラブによるものだ。人によってコーチング哲学が異なる以上、シーズン途中に指揮官が代わるのは選手にとっても難しいが、当のHCにとっても難しいもので、途中就任が初めてとなった奈良・堀田HCはその難しさを痛感する日々を送る。
「細かい部分の練習ができていないんです。次の対戦相手のスカウティング中心の練習が多い。本当なら例えば状況判断力をつける練習などをやりたいんですが、それは本来オフ期間中にやることで、たまにそれを入れると練習時間が長くなって集中力が切れてしまう。シーズン途中からというのはなかなか難しいなと感じています。できる限りのことはやっていますが、実際チームにはまだまだ足りない部分があるなと思います。ただ、そんなことを言ってもシーズン中なので、すぐ次の試合が来る。今は選手たちが自信をなくしているので、まずはモチベーションを上げさせることが大事なのかなと思います」
堀田HCといえば、日本体育大時代に全ての学年でインカレ優勝を果たした選手の1人であり、その後は創設1年目の新潟アルビレックスBBでプロキャリアをスタート。2013-14シーズンに一度引退するまでに5チームを渡り歩き、古巣の新潟にアシスタントコーチとして招かれた2015-16シーズン途中には兼任で現役復帰しているが、その翌シーズンはBリーグの幕開けとともにAC専任に戻り、さらにその翌シーズンは金沢武士団に招聘されてHCデビューを果たしている。
つまり、今シーズンはHCとして5シーズン目ということになるが、既にそのキャリアはシーズン途中のチーム消滅を味わった選手時代よりも山あり谷ありだ。金沢での2シーズン目はクラブのB3降格がシーズン中に決まり、新天地の広島ドラゴンフライズではクラブをB1昇格に導きながらも、B1では大型連敗を経験してシーズン途中に契約解除。そして今シーズン、再び憂き目にあったわけである。