泥にまみれてもなお清々しく(前編)2人の “パワーハウス” がもたらす貢献 より続く
チームの勝利のために体を張り続けるアレックス・カーク(アルバルク東京)を見ていて、ふと頭をよぎるものがあった。
タイトルですぐにピンと来た方もおられよう。
バスケットボールと言えば、たいていのライターが、どこかで一度は引用するだろう井上雄彦の漫画『スラムダンク』。
その最終盤、山王工業戦で自らを見失いかけた「ゴリ」こと湘北の赤木剛憲に対して、陵南の魚住純が放った言葉である。
「お前に華麗なんて言葉が似合うと思うか、赤木」
「お前は鰈(かれい)だ」
「泥にまみれろよ」
田中大貴や小酒部泰暉といった華麗なプレーを見せるA東京のユーザーたちを、泥臭い壁役として輝かせているカーク。
ここからは彼の考える「ピック&ロール」について、話を進めていきたい。
ピック&ロールで重要なのはスペーシング
── カーク選手の考えるよいピック&ロール、相手にとって守りづらいピック&ロールとはどんなものだと思いますか?
よいピック&ロールの要素はたくさんあると思いますが、私が考える最も大事なことはスペーシングです。なぜなら、適切なスペーシングを取っていなければ、ピック&ロールをする場所もなくなり、使えない戦術になってしまうからです。周りの選手が適切なスペーシングを取っていればこそ、ピック&ロールから2対1の状況に持ち込むことができます。さらにはスペーシングを取っていることで、ユーザーがリングに向かってアタックすることもできます。ビッグマンのディフェンスを横にずらすこともできます。ピック&ロールをする一番の目的は2対1を作ることです。2対1からアドバンテージを取って、ベストなシナリオとしては、ユーザーはレイアップシュート、ロールしたスクリーナーはダンク。そのためにはやはりスペーシングが大事になってくるのです。
── カーク選手はそのピック&ロールが得意だと言えますか?
ピック&ロールは好きなプレーです。なかでも好きなのはトップ・オブ・ザ・キーでのガードとのピック&ロールです。これまでも安藤誓哉(島根スサノオマジック)や小島元基、齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、ジョーダン・テイラーたちとそれをやっていきました。最近は(田中)大貴とのピック&ロールで、彼が右にアタックして、私がダイブするか、ポップして合わせるプレーがお気に入りです。というのも、やはり大貴はB.LEAGUEのなかでもベストフィニッシャーですし、ペイントアタックからのアリウープパスもできる、本当に器用な選手だからです。そのためにもいいスクリーンをしたいと考えています。