── オン・ザ・コートでいえば、どんなプラス面がありますか?
これはアルバルクの選手一人ひとりに言えることだと思いますが、彼らがボールを持つと相手ディフェンスの注意がそちらに引きつけられます。そのときに周りの選手がオープンになることが今シーズンは多くあります。もちろん私もオープンになる機会があります。それはチームにとってプラスです。今後の課題としては、彼らにディフェンスの注意が引きつけられたとき、周りの選手がもっと効率よく動いて、いいシュートが打てるかだと思います。
父が教えてくれた「すべてはチームのために」!
── カーク選手自身に話題を移せば、リーグでのアウォード歴はありませんが、リーグ連覇やアジアチャンピオンになったことにカーク選手の存在は大きな意味がありました。選手として心がけていることは何でしょう?
どの選手も同じだと思いますが、MVPやオールスター、ベスト5などの個人賞は、個々のキャリアにとって欲しいものではあります。ただ私が5年間言い続けているのは、優勝することが目標だということです。そのためにプレーしたいというマインドでやっています。なぜかというと、(田中)大貴がMVPを獲ったとき(2017-18シーズンのチャンピオンシップMVP)のように、優勝することでその選手の価値はさらに上がりますし、注目される機会も増えます。私が日本に来たとき、大貴のような選手と一緒にプレーすることで自分の存在価値も上がりましたし、自分のベストなプレーを引き出してくれました。優勝することで大貴がB.LEAGUEのベストプレーヤーだと、日本のみならず世界中の人に思ってもらえるよう、私は彼への恩返しとして、チームを優勝させることに重きを置いてプレーしています。もちろん他のチームメイトにも同じことが言えます。
── なぜそのようなマインドを持てるようになったのですか? ご両親の教えでしょうか? それとも、これまでに教わってきたコーチの考え方ですか?
私の父が高校のコーチだったのですが、そのときに「すべてはチームのために。チームが優勝することに一番の価値がある」と教わってきたことが、まず1つ目の理由として挙げられます。もうひとつは、今もそうですが、NBAやユーロリーグ、B.LEAGUEも含めて、バスケットをたくさん見てきたなかで、またポッドキャストを聞いたり、記事を読んだりするなかで、やはりチャンピオンシップを獲る、優勝することが一番の価値だとこれまでのレジェンドや素晴らしい選手たちが繰り返し言っています。それらを見聞きして、それが今の私のマインドにつながっています。
── 日本に来て5シーズン目です。日本でのご自身のプレーや生活をどのように感じていますか?
バスケットに関しては、幸運にもルカ(・パヴィチェヴィッチ)がヘッドコーチだったことで、私がこれまでプレーしてきたヨーロッパと同じようなシステムの中でプレーできています。その分アジャストすることが少なくて済んだのはよかった点です。加えてオフ・ザ・コートで日本人の素晴らしい性格、人間性に触れて、アルバルクのメンバーにはすごく恵まれていると感じています。私自身、近くに家族がいない環境の中でも、周りの選手がすごくよくしてくれて、単なるチームメイト、単なる友人ということではなく、本当に「ブラザーズ」、兄弟のようになってくれたことで、すごくアットホームな気持ちを持つことができました。またアルバルクという素晴らしい組織に入れたことで、個人的にもモチベーションがキープできていますし、日本で生活することへの適応にも協力してくれてすごく感謝しているし、恵まれているなと思っています。
泥にまみれてもなお清々しく(中編)ピック&ロールで重要なのはスペーシング へ続く
文 三上太
写真 B.LEAGUE