深淵をのぞく(前編)より続く
『ポイントガードをやってみたいなって思ったりは?』
岡田侑大ほどの高いボールハンドリングレベルがあれば、ポイントガードとしても問題なくプレーできるだろう。
問題がないどころか、高い得点能力を備えたプレーヤーが司令塔であるチームは、相手ディフェンスにしてみればとんでもなく厄介だ。岡田がそうなったら、またさらに面白い選手になりそうだな、なんてことをぼんやり思いながらの質問だったが。
「ボール運びとかが体力使うので、しんどいなあって」
人間というのは本当に勝手なもので、すぐに都合の悪い記憶を脳内から消し去ってしまう。
この「ボール運びしんどい」は僕自身が過去、嫌になるほど痛感させられたもので、それ故に「ポイントガードはやりたくないですよ」、「ピックアンドロール専門の人でやらせてもうてます」のスタンスを貫いてきた選手生活の後半だったのに。
それを棚上げにして、引退したのをいいことに若い人材を捕まえて、「ポイントガードやってみたら?」なんて軽挙妄動にも程がある。
老害とはまさにこのこと、深く自らの不徳を戒めねばならない。
岡田選手、ポイントガードはしんどいのでやらなくてよいです。
ピックアンドロールで点を取りましょう。
それでは、後編です。
どうぞ。
── 試合を見ていると、左手一本でもドリブルしながらそのままパスを自由に、スムーズに通せてハンドリングが素晴らしいなって思うんですが、それは昔から?
岡田 左にアタックすることが結構多いので、その影響から左でボールを扱うのが得意になりましたね。フィニッシュも含めて。
── それは、両手でパスを出していると遅くなるから?
岡田 そのときの状況によっても判断はしていますが、左手で出せるときはそのまま出してしまった方がスムーズです。ディフェンスの状況もどんどん変わってくるので、両手にボールを持っている時間が長くなると、パスを出すタイミングが相手にバレてしまうときもある。なので、出せるときは早く出せるように、片手で出しています。
── そういうのはもともとできた?それとも練習するんですか?
岡田 片手のパスの練習は、けっこうしますね。
── ピックアンドロールをする上で、そういったパスの先にいるのはビッグマンであることが多いと思うんですが、岡田選手がこれまでプレーしてきた中で、こいつとやるのやりやすいなって思ったビッグマンはいますか?現在のチームに限らず。
岡田 それはもう、今のチームのウェインさん(ウェイン・マーシャル)は自分がピックアンドロールをする中で、自分が点数を取る上でやりやすいし、合わせてくれます。それと、昨シーズン、富山で一緒に戦ったリチャード・ソロモンはアリウープを出せるので、その楽しさはありました。
── 合わせるのが上手いって感じ?
岡田 いい角度でスクリーンをかけてくれますし、ダイブ(スクリーンをかけたあと、ゴールに向かっていく動き)の仕方もウェインさんは上手です。
── では逆に、ピックアンドロールのユーザーで上手いなって思う選手、参考にしている選手はいますか?Bリーグでなくても、どこのリーグでも。
岡田 NBAはよく見るんですけど、大体ポイントガードのプレーを見ています。ルカ・ドンチッチだったり、トレイ・ヤングもそうですし、ステフィン・カリーとかもけっこう見ています。
── そういう選手の、どんなところを参考にしてます?
岡田 フローターのタイミングとか、アリウープパスを出すタイミング、2対1の駆け引きは見ていて上手だなと思うところがいっぱいあります。他には、逆サイドからヘルプに来るディフェンスを読んでボールを飛ばしたりするところも見ていて、そういうところを参考にしています。