── ここからはより実際的な感覚をお聞きしたいのですが、例えばポイントガードが岡田選手のためのプレーをコールして、ボールを受けたときにまず考えていることや意識していることはなんですか?
岡田 まずはシュートを狙って、その場で3ポイントが打てたら打ちたいです。その後、相手がスクリーンをかわすことを意識しすぎてドライブのコースに入れていなかったら、リジェクト(スクリーンの逆方向にドライブ)してリングにアタックします。
── その後、そういったチャンスがなければスクリーンを使ってピックアンドロールに入ることになると思うのですが、岡田選手が考える、プレーを成功させるために必要なスキルはなんだと思いますか?
岡田 最初にボールをもらった時点で、簡単にプレーさせないためにディフェンスがプレッシャーをかけてくると思うので、それに対して逃げる体勢ではなくてアタックする姿勢を作りながら、ビッグマンの壁にディフェンスを確実にぶつけることが大切だと思います。そしてそのあと、信州に来て1番学んだのはディフェンスを背負う、ジェイルすることで、今はそこを大切にしています。
※ジェイル……ピックアンドロールでスクリーンを使った後、ドリブルしながらその場に立ち止まり、自分のディフェンスが戻ってくるのを邪魔する技術。2対1の状態をより長く保つ効果があり、ビッグマンがスクリーンをかけた後にシュートしやすい場所へ移動するための時間を稼いで、どちらかがノーマークになる確率を高める。
── 信州では他の選手、熊谷選手や前田選手などもピックを使ったあとジェイルしているシーンをよく見ますが、これはチームでワークアウトをしているんですか?
岡田 信州に来て、1つのオプションとして教えてもらったことなので、けっこうチームで練習はしていました。
── そのようなピックアンドロールの具体的なスキルを、チームとしてワークアウトでやることはこれまではなかったですか?
岡田 そうですね、あまりなかったです。
── それはつまり、信州に来たことでより一層岡田選手のピックアンドロールに関するスキルが向上しているということでしょうか。
岡田 個人的には、使い方が成長したなと感じています。
信州への移籍をきっかけにさらなる成長を遂げた岡田だったが、個人的には「身体能力がないからピック」という意見に激しく頷きすぎて首がむち打ちになるかと思った。全くもってその通りで、自分よりもフィジカル的に恵まれた相手に対して勝負できる最大の武器がピックアンドロールなのだ。
スピードやパワーで到底敵わない相手を駆け引きで陥れる快感は中毒性が高く、これにハマるバスケットボール選手が後を絶たない(多分)。
だが身体能力の差をひっくり返すためには、それだけ高度な技術が必要になる。
今回の話に出てきたジェイルなどはその1つだが、他にも「すげーなー」と感心するスキルが盛りだくさんの岡田選手なので、後編でも紹介していきたい。
深淵をのぞく(後編)へ続く
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE