ピックアンドロールの成否を分ける最も重要な要素は、ボールを持ってスクリーンを使うユーザーの能力である。破壊力の高いプレーである分、ディフェンスの対策も進化を遂げており、様々な手段を用いて阻止を試みるようになった。
オンボールスクリーンが起こればどこかに必ず発生するディフェンスの穴を、大急ぎで埋めるか、あるいは巧妙に隠すかしてピックアンドロールを成立させない努力は、今や全てのチームにとって必須の作業である。そのディフェンスの意図を見破り、より確率の高いシュートを選択できるかどうかは、ユーザーの技術力と判断力にかかっている。
信州ブレイブウォリアーズに移籍した岡田侑大は、オンボールスクリーンのユーザーとして一角の存在であることを世に知らしめた。以前まではスコアラーとしての色が濃かった彼のプレースタイルが、今シーズンになってさらなる発展を遂げている。
自らの得点力はそのままに、かつチーム全体のオフェンスを活性化させるプレーメーカーとして、信州のファーストオプションを担っている。
ピックアンドロール芸人だった筆者としてはこの変化を見逃す手はなく、今季の彼に何かが起きたのか、あるいは元より持ち合わせていたものだったのか大変気になるところであったため、直接話を聞いてみることにした。
── 信州のオフェンスはピックアンドロールを主体としているように見えますが、これは本人たちの意図するところなのでしょうか。
岡田 うちはピックアンドロールを起点にしてディフェンスを崩していこう、という作戦なので、やはり困ったときにはピックアンドロールの指示が1番多いです
── その中でも岡田選手がユーザーになることが1番多いようですが、これもチームで共有されている?
岡田 そうですね。ポイントガードが自分の(ための)プレーを1番多くコールして(使って)くれるのもあって、それで自分が攻める回数が多くなっているのかなと思います。
── 以前に三河や富山でプレーしていた頃よりもピックアンドロールを使う機会が格段に多くなったと思うんですが、それによってスコアラーとしてだけではなく、周りを生かすこともできる選手だという印象を強く受けました。本人の感覚としてはどっちが得意ですか?
岡田 始めに考えているのは、点を取ることです。ですが信州に来てクリエイトする楽しさにも気づきました。アシストするというよりは、相手のディフェンスを崩す、ということを自分の中では1番大切にしています。
── それは信州に来てから変わったことですか?
岡田 前の2チームにいたときは、ピックアンドロールを使って点数を取ることしか考えていなかったんですが、信州はピックアンドロールした後のシステムもしっかりしているので、ディフェンスを崩すことの楽しさを知れたと思います。
── 岡田選手がピックアンドロールに感じる魅力、やってて楽しいと感じるのはそういうところですか?
岡田 自分は身体能力がないので1対1からズレを作るのが得意ではなくて…なのでピックアンドロールでズレを作ってそのギャップをアタックするのが楽しいというか、やっていて1番ワクワクします。