2016-17シーズンに西宮ストークスの特別指定選手としてBリーグデビューを果たし、その後の3シーズンはバンビシャス奈良でプレーした松本健児リオンも、2020-21シーズンは所属先が見つからないまま開幕を迎えた。しかし、そんな折に伊藤HCから声がかかり、トライアウトに参加。Bリーグがシーズンの折り返しを過ぎた2021年1月に、記念すべき契約第1号選手として入団が発表された。
「契約第1号という肩書は一生残る。中途半端なプレーはできないと思いました」という松本は、第19節を終えた2月13日の時点で32試合全てにスターターとして出場。持ち前のハードなディフェンスと脚力を遺憾なく発揮し、クラブとして初めてのホームゲームとなった10月9日の横浜エクセレンス戦では、日本人スーパーダンカーとして注目を浴びる佐藤誠人の速攻ダンクをチェイスダウンブロックするビッグプレーも披露した(※松本の身長は183センチ)。
何よりも伊藤HCが目を見張っているのが、バスケットに取り組む姿勢。それが、若手・ベテランを問わずチーム全体に良い影響を与えていると伊藤HCは断言する。
「日々練習できること、試合ができることのありがたさを感じていて、一つも無駄にしない。以前からそうだったのか、1年空いたからなのかは僕にはわかりませんが、少なくともヴェルカに来てからの彼のプロフェッショナリズムは間違いなくヴェルカの象徴ですし、リオンが激しくディフェンスして、速攻に走ってくれる姿がヴェルカのバスケットそのものです」
そんな高評価を受ける松本は、今のチームについて「雰囲気はかなり良いです。連勝していても気の緩みは一切ないし、毎回の練習、毎回の試合で常に成長しようとしていて、コミュニケーションも取れています」と、その強さの秘訣を語る。そして近藤と同じように、「見返してやろう」という意識を持ちながらも「本気でB1を狙っている、そういう環境でプレーできることが嬉しいし、貢献したい気持ちが強い。しっかり恩返ししたい」と感謝の気持ちを自身のエネルギーに変えている。
「今はバスケットがすごく楽しいなと思うし、お客さんの前でプレーできることもモチベーションになる。これから先も、初心と感謝を忘れずにプレーしていきたいです」
1年のブランクを味わった悔しさと、それを経たからこそ生まれた感謝の気持ちは、これからも2人の意識を高め続け、長崎の躍進を支える原動力となる。
文 吉川哲彦
写真提供 長崎ヴェルカ