今シーズンは例年以上にトピックの豊富なB3リーグで、今にわかに脚光を浴びている選手がいる。残念ながら中止となってしまった沖縄アリーナでのBリーグオールスターに代わってネット配信されたオンラインイベント「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2022 IN STUDIO」で、その名前は登場した。ただしその瞬間、本人は試合の真っ最中であっただけでなく、自身の名前が出てくるのも知らなかったことは、念のため付け加えておきたい。
名前が登場したのは、メディア投票によるベストプレーヤーランキングのコーナー。ドリブル部門とシュート部門はベスト3の発表だったが、ダンク部門だけはMCを務めた副島淳が「動画を見たんですけど、かなりエグいです!」と4位の選手も紹介。それが、横浜エクセレンスの佐藤誠人だった。日本人選手の中では全体1位のコー・フリッピン(琉球ゴールデンキングス)に次ぐ2位だったが、並みいる外国籍選手を押しのけて全体4位に食い込んだのは、佐藤のダンクのインパクトを物語る。
横浜EXといえば、Bリーグになってからは選手の入れ替えがほとんどなかったが、今シーズンは特別指定選手を含めた14人のうち8人までが新加入。醸成されてきたチームケミストリーも再構築する必要があり、開幕から9連敗という苦いスタートを切った。過去にB2で2シーズン戦ったチームとしては厳しい現実だ。
そんな中で佐藤は、これまでチームに少なかったタイプの選手として、新しい風を吹き込もうとしている。トライフープ岡山から移籍してきた今シーズンは、その岡山との対戦となった第4節からスターターに定着。第12節からは再びベンチスタートに回っているが、一定のプレータイムは確保し続けている。
1月16日の第15節、豊田合成スコーピオンズ戦は佐藤の活躍が特に際立った。プレータイムは今シーズン自身最長の27分4秒で、16得点はキャリアハイ。終盤に追い上げてきた豊田合成に残り24秒でとどめを刺したのは、佐藤のスティールからの速攻ダンクだった。本人によると、プロになって以降は「おそらくこれが6本目くらいだと思います」とのこと。2019-20シーズンに岡山の特別指定選手としてデビューした試合で初ダンクを決めているが、昨シーズンは1度もできなかった。ということは、残る5本(?)は全て今シーズンでのもの。持ち味を十分に発揮できていることは確かだ。
しかしながら、ダンクができるだけでプレータイムが伸びるはずもない。岡山時代から自覚していたウィークポイントの克服に取り組み、その成果が表れているからこそ佐藤はコートに立つことができている。
「僕の弱点はディフェンスだったんですが、石田(剛規)ヘッドコーチがディフェンスに重きを置いているので、ディフェンスを頑張らなければ試合には出られないと思って、アジリティやディフェンスの強化を他の人よりもやってきました。ポジションはスモールフォワードですが、ガードにもつけるようにディフェンス力を高めていけたらと思っています」
佐藤が注目されるようになったのも、自身の行動力の賜物だ。冒頭のオンラインイベントに名前が登場したのは、バスケットボールコメンテーターの井口基史氏がツイッター等で佐藤のオールスター・スラムダンクコンテスト出場をプッシュしたのが端緒。「ダンク集1個くらい。ください。」(原文ママ)というツイートを見た佐藤は「速攻動画編集して(笑)、自分のフォルダにあるありったけの動画をかき集めて投稿しました」と即行動に移した。その結果、馬場雄大(テキサス・レジェンズ)がツイッターで「これは凄い!!!」と反応し、佐藤のダンク動画は瞬く間にBリーグファンの間に広がった。