11月が終わった時点で茨城の成績は2勝12敗、東地区最下位と苦しい戦いが続いている。1部に昇格して間もないことを考えれば、この結果も想定内と言えるかもしれないが、それも踏まえて今シーズンの茨城には「大きな目標がある」と多嶋は言う。
「ロボッツに行くと決めたときから自分の中で厳しいシーズンなるという覚悟はありました。僕だけじゃなく、チーム全員にその覚悟はあると思います。うちのグレスマンHCを見ていてすごいなと思うのは、さっきも言ったロボッツのスタイルを何がなんでも曲げないということ。長いシーズンにはいいことも悪いこともいっぱい起こるだろうし、勝てない試合が続けば疑心暗鬼になることもあるかもしれない。だけど、おそらくグレスマンHCはブレないと思うんですね。ブレずに求め続けて、ロボッツのバスケットを積み上げていこうとするはずです。つまり勝ち負けの前にそれがロボッツの目標。1勝を求めてどれだけ積み上げていけるかが今シーズンの最大の目標だと思っています。
これは僕の勝手な意見だから正しいかどうかはわかりませんが、今のBリーグには二通りのチームがある気がするんですよ。1つは長年チームを築いてきたコアなメンバーやコーチ陣に大きな変動がなく、そこに有力な外国籍選手をプラスしたチーム。千葉ジェッツ、川崎ブレイブサンダース、宇都宮ブレックス、アルバルク東京といった強豪はみんなそんな感じですね。一方それらの強豪とチャンピオンシップを争うチームにはガラッとメンバーを入れ替えて、そこに強力な外国籍選手を加え、いわゆる “一発力” があるチームに育てるイメージがあります。じゃあロボッツはどっちに属するんだろうと考えたとき、僕は前者だと思いました。コアなメンバーを残しながら、これから積み上げていくことを選択したチーム。僕は今、そこにやりがいを感じています」
インタビューの間に多嶋は何度も『積み重ね』という言葉を口にした。それは茨城ロボッツへの気持ちと同様に33歳で移籍した自分自身に言い聞かせる言葉のように聞こえた。
「気持ちはあってもなぜか調子が上がらないときってあると思うんですよ。チームとして上手く回らないときもあると思います。でも、何がどうあろうと、自分がやるべきことはやり尽くそうと決めています。コートの上だけではなくて自分の経験から気がつくことがあれば若い選手にアドバイスしたり、苦しいときこそ声をかけたり、できることは全てやりたい。B1に挑戦する茨城というチームの中でそれをやり通すことが自分の使命だと思っています。で、シーズンが終わったとき、こんなこともあった、あんなこともあった、いいことも悪いこともいっぱいあったけど、俺たちはやり切ったよねと笑えるチームになりたい。なーんて、まだまだシーズンは長いですけど(笑)。とにかく決めたことをぶらさず積み上げていくこと。それがロボッツに移籍した33歳の自分のチャレンジです」
茨城ロボッツ #8 多嶋朝飛
新天地で目指す『これからの多嶋朝飛』
前編 プロになって10年。チャレンジするなら今しかないなと思った
後編 決めたことを決してぶらさずシーズンを通して積み上げていきたい
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE