新天地で目指す『これからの多嶋朝飛』(前編)プロになって10年。チャレンジするなら今しかないなと思った より続く
シーズンが始まるとB1に所属する選手がB2の試合を見る機会はあまりないという。多嶋自身B2で戦う茨城ロボッツがどんなチームなのか正直、詳しいことはわかっていなかった。じっくりと試合を見たのはB2のプレーオフ。レギュラーシーズン1位の群馬クレインサンダーズ(52勝5敗)と2位の茨城(41勝16敗)がB1に自動昇格することはすでに決まっていたが、B2の覇者を決定するプレーオフ決勝にはまた特別な熱気がある。2敗を喫した後、群馬のスイープを阻止した茨城の1勝には「このままシーズンを終わらせない」という意地と粘りが感じられた。
決めたことを決してぶらさずシーズンを通して積み上げていきたい
「あのプレーオフを見ていたとき、茨城に行くことはまだ決まっていなかったんです。だから一観客として見てた感じなんですけど、とにかく茨城の雰囲気が良かった。チームとしてだけじゃなくてファンとの一体感があって、みんなで盛り上げていこうという雰囲気が、なんか、こう、すごく気持ち良くて、いいチームだなあと思いました。そのあとに正式に声をかけていただいて、(リチャード)グレスマンヘッドコーチともお話したんですけど、これからB1に上がって勝ち星を挙げていくのは簡単ではないことを理解しつつ、それでもここから積み上げていきたいんだというクラブの熱が伝わってきたんですね。プレーオフを見たときの印象、話し合いを持ったときの印象はチームに入って練習に参加したときも変わりませんでした。
東海大の同期だった(遥)天翼とは10年ぶりにチームメイトになることになって、彼だけには移籍の話はしていたんですが、どうやら僕たち2人が(チームの)最年長みたいで。最年長!信じられないですよね(笑)。僕はもともとベラベラしゃべってチームメイトに絡んでいくようなタイプじゃないんですけど、幸い年齢問わず接しやすい選手ばかりなので、溶け込みやすかったです。最年長選手としては今まで以上にコミュニケーションをとってチームをリードしていかなきゃなと思っています」
茨城について「雰囲気が非常にいい」と語る多嶋だが、チームのプレースタイルについてはどうとらえているのだろう。また、そのスタイルにアジャストしていくニューフェイスとしての課題、グレスマンHCから求められているのはどういったことなのだろうか。
「茨城のスタイルはアップテンポなバスケット。同時にそれがストロングポイントであると感じています。もちろんチーム内で決められている動きとかオプションみたいなものはありますが、この選手はここにいて、こう動いたらここでピック&ロールをするというようなセットオフェンスはほぼありません。どこよりフリーランスというか、ポジションが定まっていないので、選手はそれぞれ味方の動きとか相手のディフェンスを見ながらプレーします。速いテンポを求めるコーチなので他のクラブに比べてめちゃくちゃ動く、めちゃくちゃ運動量が多いバスケットを展開します。言葉はアレですけどひとことで言えば “イケイケバスケ” でしょうか(笑)。僕たちが目指すのはイケイケバスケの完成形ですね。
うまくいかないときはみんなで話し合って40分間トライし続けていく、このスタイルがさらに徹底されていけばどんなチームが相手でも勝負できるようになると思うので僕自身“成長していくロボッツ”が楽しみでなりません。コーチからはどんどんアグレッシブに攻めてほしいと常に言われていて、それは意識してコートに立っていますが、まだ細かい部分で周りとプレーが合っていないところがミスにつながっているのは確か。自分からアジャストしてターンオーバーを減らしていくのがまずは最初の課題ですね。心身ともにきついと感じることはありますが、自分たちのバスケを追求していこうという雰囲気があるからストレスは感じません」