ホーム開幕節となった第3節で香川ファイブアローズを連破すると、波に乗って11月10日の仙台戦まで8連勝。これは、B2昇格後ではクラブ新記録である。そして、連勝すれば10連勝到達というところでホームに迎えたのはアースフレンズ東京Zだが、ここで桜木SVCの脳裏をよぎったのが、昨シーズン終盤にチームに合流した2試合。B2プレーオフ進出決定が目前に迫る中、それまでに6勝しかしていなかった東京Zに続けて苦杯を喫したあの2試合だ。
結果から言うと越谷は東京Zを退けて10連勝を達成したのだが、第1戦は前半リードを許す展開だった。桜木SVCは「昨シーズンと同じように激しいプレーで自分たちを苦しめた。勝つことができてホッとしました」と安堵。そして、「緊張もしたし、怖かったというのが正直なところです。理由は、東京Zはまだ1つも勝っていないということと、自分たちが連勝中だったこと。リラックスした姿勢を見せることはしたくなかった」と、東京Zが開幕からまだ白星に恵まれていないからこそ、高いエナジーで挑んでくることを警戒していたようだ。
そんな中、10月の8試合で計119個、1試合平均で14.9個にのぼっていたターンオーバーを11月は5試合消化時点で計51個、1試合平均10.2個まで減らすなど、「どのオフェンスもシュートで終わりたい」という桜木SVCの取り組みも成果が表れ始めている。現役時代も常に高いレベルのバスケットを追求してきた桜木SVCの考えがどこまでチームに浸透するか、今後も楽しみだ。
最後に、桜木SVCが生まれながらのコーチであること、越谷でコーチ業に臨む決意を本人の言葉で示してこの稿を締めたい。現役時代も技巧派、頭脳派という印象が強かったが、それはやはり桜木SVC自身がコーチとしての将来像を見据えていたからこそ、見る者にも強く感じられていたのだということに気づかされる。
「高校の頃から、将来はコーチをしたいと思っていたんです。今こうしてコーチの仕事ができていることはすごく幸せです。現役としてプレーしているときも、コーチングのことは常に頭の中にありました。アイシンで19シーズンプレーする間に日本のいろんな選手と触れ合ってきて、彼らの性格や好み、習慣や傾向といった日本のスタイルはすごく勉強になりましたし、それは今コーチングする中で活かすことができています。自分はこのチームでウィニングカルチャーを作ろうとしている。ファンの皆さんが自分たちに期待してくれている勝利を送り届けるために、自分は責任を持ってコーチングしますし、選手たちも責任を持ってプレーしてくれているはずです」
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE