名古屋ダイヤモンドドルフィンズの爆発力はリーグ屈指だと思う
名古屋Dのアシスタントコーチを務める小林康法は東海大時代の同期だ。これまで籍を置いたどのチームでも「アシスタントコーチに助けられることが多かった」という須田にとって自分をよく知る小林の存在は名古屋に移籍する決め手の1つになった。さらに今シーズンからヘッドコーチに就任したショーン・デニスは栃木時代に世話になったアシスタントコーチであり、ともにリーグ優勝の喜びを分かち合った仲だ。そのショーンヘッドコーチは須田についてこう語る。「須田と過ごしたブレックス時代のことはよく覚えています。私たちは一緒にいっぱいワークアウトをしました。彼はくじけないメンタルを持ち、努力を続けることができる選手。彼がドルフィンズに来てくれて、また一緒にバスケットをやれることは本当にうれしい。彼がドルフィンズにもたらしてくれるものに期待しています」。
昨シーズンの名古屋Dは32勝24敗で西地区4位となりチャンピオンシップ進出を果たせなかった。さらにコロナ禍でリーグが途中終了(3月)した2019-20シーズンは17勝24敗と負け越して西地区5位に終わっている。ここしばらく結果を残せていない印象は否めないだろう。しかし、須田は今年の名古屋Dを「すごく怖いチームだと感じている」という。たとえばサンロッカーズ渋谷との開幕戦は2連敗したものの第1戦は3Q終了時点で10点あったビハインドを残り2秒で0とし、第2戦は前半17点差から3点差まで詰め寄る猛追を見せた。「今年のチームにはそういう底力を感じるんですね。おそらく爆発力ではリーグ屈指じゃないでしょうか。もし自分が敵チームにいたら一瞬たりともディフェンスの気が抜けない怖いチームだと思っています」。その爆発力は隙あらばゴールを狙うアグレッシブさから生まれる。「アルバルクは常により良いシュートセレクションを求めるというか、しっかりノーマークをつくって(シュートを)を決め切るという感じでしたが、ドルフィンズはもっと自由。自由と言ったらちょっと語弊がありますが、とにかく空いたら迷わず打つ。もちろん闇雲に打っていいわけではなく、(ここで打てるという)裏付けは必要ですよ。けど、みんなが積極的にゴールを狙うスタイルは見ている方もおもしろいし、自分にも合っている気がします」。自身に課しているのは先頭を切るディフェンスとアグレッシブなオフェンスだ。そして、「もう1つ」と付け加えたのはリーダーシップをとること。「実はあまり得意な役割じゃないんですが」と前置きしながらも「もうすぐ30歳になりますからね。前向きに取り組んでいきたいです」と笑った。
最後に少し意地悪な質問をしてみた。
『昨シーズンまでドルフィンズにいた安藤周人選手がアルバルク東京に移籍して、須田選手がドルフィンズに移籍したことで、ファンの中には2人が入れ替わったようだという人もいます。その点について意識することはありますか?』
しばし考え、少し笑って、須田が答える。「まったく意識していないと言えば嘘になるかもしれません。彼は日本代表にも選ばれたシューターでいわばドルフィンズの顔だった選手ですから、自分はそれよりインパクトを残さなきゃなって思うことはあります。だけど、彼がアルバルクに行って自分がドルフィンズに来たとか、そういうのは特に意識しませんね。大事なのは自分と誰かを比べることじゃなくて、自分が今、このチームのために何ができるかということじゃないですか」。3つのチームで培った経験値をどう生かせるか。新たにどんな学びを得られるか。「そうですね。それが自分が考える『移籍選手の在り方』だと思います」。名古屋Dのユニフォームを身に付け、自分の殻を破り、さらなる高みを目指す。須田の4度目の挑戦はまだ始まったばかりだ。
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ #11 須田侑太郎
このチームで自分の殻を破り、さらなる高みを目指したい
前編 『13番目の選手』から始まったプロ生活
後編 ネガティブに思える出来事からも学べることはある
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE