この試合で盛實をスターターに起用した理由を、伊佐HCは「ハンドラーとスコアラーが必要だった」と説明。また、「昨シーズンよりもボールを持たせてあげたい。今日のように、例えば(ベンドラメ)礼生がいない時間帯にハンドラーをフォローする役割でボールを持たせて、攻めさせたいと思っています。まだ僕が彼を活かしきれていないところがあるんですが、まずボールを持たないことには彼のプレーが始まらない」と、盛實の持ち味をできる限り引き出したい考えも示す。
そのためにはチームに要求される一定のディフェンスの強度が必要となるが、伊佐HCが「ここまではオフェンスの調子が上がらなかったのでプレータイムも制限されていた」と言うように、チームに期待されているのはあくまでもオフェンス。その上で、「まだまだ先輩たちのレベルには到達していませんが、我々のディフェンスを彼なりに一生懸命やろうとしている。今日のように彼らしいスコアやアシストが生まれてきたら、ディフェンスは少し目をつぶってでもコートに置いて、オフェンスの中心としてやってほしいと思っています」と盛實にかける期待は非常に大きい。
当の盛實自身は「チームとしてやっていることなので、最低限のことはやらないと試合に出られない」とディフェンスを頑張ることが大前提としつつ、「それプラス、自分が求められている得点やアシストがちょっとずつでも良くなっていけばと思う。今日のようなプレーをスタンダードにできればいいかなと思います」と自身の持ち味を出すことにも意欲的だ。「プロは結果が全て」という言葉にも、今シーズンは自身のプレーにさらに磨きをかけていこうという強い意識が窺える。
これは蛇足になるかもしれないが、盛實のプロとしての成長は試合後のヒーローインタビューにも垣間見えた感がある。コート中央でインタビューを受ける若手を、後ろに控える先輩の選手たちが冷やかすのはよくある光景。今回は盛實が名前を呼ばれた時点で他の選手たちから何故か異論が噴出し、インタビュー中も野次(?)が飛び交った。インタビュアーを務めたアリーナMCのパトリック・ユウが思わず「後ろがうるさいですね(笑)」と言うと盛實も「ちょっとガヤがすごいんですけど(笑)」と返し、なおもたたみかけるチームメートを「ちょっと今俺の時間なんで」と笑いながら制した。同世代の選手よりも早い時期から人前に出る機会が多かったこともあるが、こうしたインタビューなどにもすっかり慣れ、自然体の自分を解放している印象を受ける。
「ありがたいことに先輩たちがああやってイジってくれるので、逆にインタビューも気楽にできるというか、いつも通り喋れば大丈夫なんだなと思ってます。これからプロとして、バスケットだけではなくインタビューとかコート外に関してもプロらしく行動していきたい。応援される選手は愛される人だと思うので、人間としてしっかりとファン対応などもしていければと思います」
プロとして一皮むけた今、「モリザネセクシー」とも称された華麗なプレーで試合を支配する姿を、これからは何度となく見ることができそうだ。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE