ルーキーの豊作年だった昨シーズンのBリーグ。ルーキーベスト5には、最優秀新人賞に選ばれたテーブス海(宇都宮ブレックス)のほかに小酒部泰暉(アルバルク東京)、増田啓介(川崎ブレイブサンダース)、寺嶋良(京都ハンナリーズ、現広島ドラゴンフライズ)、アイザイア・マーフィー(広島)と錚々たる顔ぶれが並んだ。このうちマーフィーを除く4人は特別指定選手として一昨シーズン以前からBリーグの舞台を踏んできた選手であり、赤穂雷太(千葉ジェッツ)や牧隼利(琉球ゴールデンキングス)も学生時代から将来を嘱望され、同じく特別指定選手としてプレーしてきた。
そんな昨シーズンのルーキーの中で、特別指定選手として最も豊富な経験を誇っていたのは盛實海翔。専修大学時代に「和製ジェームズ・ハーデン」の異名を与えられた盛實は、3年生のときにサンロッカーズ渋谷の一員となり、伊佐勉ヘッドコーチに認められてすぐにプレータイムを獲得。翌年もSR渋谷の特別指定選手としてプレーし、昨シーズン晴れてプロ契約を結んだ。
しかし、特にディフェンス面でプレーの強度を保つためにタイムシェアを徹底しているSR渋谷において、昨シーズンは1試合平均11.8分と必ずしも満足のいくプレータイムを確保できたわけではない。また、プロともなれば外国籍選手をはじめ得点力の高い選手は他にもいるとあって、大学時代までチームの得点源としてプレーしていた盛實の本来の持ち味はなかなか活かされなかった。3ポイント成功率26.7%という数字は、カレッジファンからするとにわかには信じ難い数字なのではないか。
今シーズンも開幕から一定のプレータイムは得ていたものの、10月23日の宇都宮戦から同27日の群馬クレインサンダーズ戦まで3試合連続で無得点と、再びプロの壁に突き当たるかと思われた。そんな盛實にとって、11月7日の三遠ネオフェニックス戦はもしかすると一つの転機になるかもしれない。
試合開始約50分前に行われるチームミーティングで、盛實は今シーズン初めてスターターに入ることを告げられる。SR渋谷はプレータイムが特定の選手に偏るどころか、スターターも固定されない傾向があるということもあって、盛實自身も「いつ出てもいいように準備しているつもりなので」と特に驚くことはなかったという。開始約2分の間に2つのアシストを記録すると、その2分後には3ポイントが炸裂。SR渋谷は開始5分までに選手を全員入れ替えることも多いが、この日の盛實は交代でベンチに下がるまでにまずしっかりと一仕事をこなしてみせた。
シュートタッチの良かったこの日はその後も3ポイントで得点を重ね、同点に追いつかれて迎えた第4クォーターも2本の3ポイントで相手の心を折り、チームの勝利に大きく貢献した。18得点、3ポイント6本成功(試投7本)、7アシストはいずれもBリーグでのキャリアハイ。大学卒業後、最も盛實らしさが出た試合だったと言っていいだろう。