ルーキーながらも、あらゆる局面でシュートを狙う山口は「ゲームの接戦の場面など、スタッフ陣から任されているんだなと責任も感じています。チームで作っているシュートもあれば、自分から決めてやろうという気持ちで打つこともあります。試合に出させてもらっていることに感謝し、これからも積極的にプレーしていきたいです」と失敗を恐れずにチャレンジし続けている。また、佐古ヘッドコーチをはじめ、北海道ではチャレンジする環境をしっかりと与えていた。ディフェンスでは、開幕戦から外国籍選手とのマッチアップが続き、ビッグラインナップの川崎戦はニック・ファジーカスにブロックする場面もあった。経験豊富かつ大きな外国籍選手に対し、「やられても仕方ない」と開き直る一方で、「やられてばかりもいられない」と力を込め、日本代表入りにも照準を合わせる。
川崎の藤井祐眞は平均12.9点を挙げ、ここ3試合は試投数が二桁を超えた。北海道に敗れた反省点として、「シュートが入らなかったことでボールが止まってしまい、ニック(ファジーカス)のところばかりになってしまった」と佐藤賢次ヘッドコーチは振り返る。そのファジーカスは28点を挙げる活躍だったが、川崎が目指すのはチームスローガンに掲げた『MOVE』である。
「ビッグラインナップでもノーマルでも、まずひとつ目の仕掛けがあって、そこでできたアドバンテージを全員で突いていく。人とボールをしっかり動かして、空いた人が良い判断をしていくことを目指している。その結果、誰に頼るわけではなく、日本人選手の試投数も増えているのかなとは思っています」(佐藤ヘッドコーチ)
10年の月日を超えて同じチームとなった佐古賢一ヘッドコーチと橋本竜馬キャプテン
33歳を迎えたベテランの橋本竜馬も、昨シーズンの3.7本から5.1本へと試投数が増えた。「今までのプレーはコントロールに重きを置いていましたが、今のチームの状態から言うとバスケットのテンポや、一人ひとりが1つでも2つでもファウルを稼ぐことが重要だと佐古ヘッドコーチは仰っています。その中で自分ができることを探したときに、このようなプレーになっているのかなと思います」とその変化について語っている。ヘッドコーチからは、「さらなる引き出しを持って欲しい」と言われており、それが積極的にゴールへ向かうプレーにつながっていた。
佐古ヘッドコーチと橋本のルーツは同じアイシンシーホース(現・シーホース三河)である。東日本大震災の影響によりシーズン半ばで中止となった2010-11シーズンに佐古ヘッドコーチはユニフォームを脱いだ。その翌シーズンにルーキーとして入団したのが橋本であり、同じチームで一緒に戦うことはなかった。「何の縁かは分からないが、今は北海道でキャプテンとヘッドコーチとしての関係になり、良いコミュニケーションが取れている。彼がチームの中でがんばっている姿が、他の若い選手たちの刺激になっている。とにかく彼には期待もしているし、助けてもらっている」と佐古ヘッドコーチは全幅の信頼を寄せていた。10年の月日が経ち、同じチームで戦う橋本も、「選手としてコーチを選ぶことはできないですよね。でも、佐古さんが来ることが決まったときはうれしい気持ちになりました」と素直に喜び、お互いに経験してきた全てを北海道に注入している。
コーチらスタッフ陣も、選手たちはベテランもルーキーも関係なく、勝利を信じてチャレンジする新生レバンガ北海道。最年少の山口がひと皮むけたとき、北海道の順位も大きく変わっているはずだ。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE