多田さんが千葉に入ったBリーグ元年、S&Cコーチが常駐するチームは数えるほどしかなかったという。それが年々増加の傾向にあるのはうれしいことだ。だが、世界に目を向ければチームにおけるS&Cコーチは不可欠な存在とされており、NBAではチーム内で大きな発言力を持つポジションとも言われる。「Bリーグでも少しずつ変わってきてはいますが、必要価値をしっかり認めてもらうにはまだまだ頑張らなきゃと思っています」。それは決してエゴではない。「チームのために貢献したい」という強い思いと「自分にはそれができる」というS&Cコーチとしてのプライドが言わせる言葉だろう。強いチームには必ず裏で支える優秀な人材が揃う。それを身を持って示していくことも多田さんの今後の目標だ。
今シーズンも選手の最強の伴走者を目指す
千葉は今シーズンから練習場を船橋アリーナからロックアイスベース(千葉県八千代市)に移した。ウエイトトレーニングの施設がなかった船橋アリーナでは、練習後別のジムに移動してトレーニングを行っていたが、館内にトレーニングジムが完備したロックアイスベースでは移動時間のロスもなくなった。
「いろいろ楽になりましたね。前に借りていたジムは船橋アリーナから30分ぐらいかかるので、朝の7時にジムに行って練習開始直前に体育館に戻るとか、夜は9時までにジムに行かなきゃならないとか、毎日ほぼほぼそんな感じでした。船橋アリーナは休日には使えないので、休日にトレーニングしたい選手はジムの方に行く。もちろん私も行きます。選手が1人でも来れば私も行きます。そんなこんなで休む間はあまりなかったですが、それはそれで楽しかったんですよ。選手とコミュニケーションを取れたし、こんな言い方をするとアレですが、S&Cコーチとして頑張ってる姿を選手に見てもらえた(笑)。理解してもらえたと思っています」
そもそも家にいたって選手の身体のことを考えてしまう。ついつい新しいトレーニングメニューが頭に浮かぶ。多田さんは365日S&Cコーチだ。疲れませんか?と尋ねると「この仕事が好きなんで」と、笑った。「選手1人ひとりと向き合うこの仕事が好きなんですよ」。
今シーズンもまたケガなく、最高のパフォーマンスができる身体づくりを目指し、選手たちの最強の伴走者になりたいと思っている。
千葉ジェッツ 多田我樹丸S&Cコーチ
常に選手の身体と向き合い“1番いい正解”を探し出す
前編 “ケガをさせない身体”をつくることが僕の使命
後編 数字はわかりやすい。だが、自分の目で見ることも大事
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE