千葉ジェッツのストレングス&コンディショニングコーチ(以下S&Cコーチ)を務める多田我樹丸さんは沖縄県出身。小学校のときにバスケットを始め、並里成(琉球ゴールデンキングス)と一戦を交えることもあったという。とにかくバスケットが好き。スポーツが好き。高校卒業後、スポーツ選手のトレーニングについて学ぶ専門学校に進んだのも「何かしらスポーツの世界で貢献したい」という思いがあったからだ。千葉ロッテマリーンズ(プロ野球)のコンディショニングコーチ、沖縄でのパーソナルトレーナーなどを経て、千葉ジェッツに入団したのはBリーグが開幕した2016-17シーズンから。以来チームを支えるコーチングスタッフの1人として天皇杯3連覇を経験し、昨シーズンはリーグ初優勝の喜びも味わった。が、頂点を極めた直後の率直な感想を聞けば「喜びと同じぐらい安堵感がありました」と答える。「途中、大倉(颯太)をケガで離脱させてしまったのですが、終盤の過密スケジュールの中でも最後までケガ人を出さず、無事シーズンを終えられて本当によかったなあと」。それは「ケガ人を出さない」を命題として走り続けてきたS&Cコーチの正直な気持ちだったに違いない。
“ケガをさせない身体” をつくることが僕の使命
「フィジカルを強くしたり、足腰を強くしたりといった『選手がより良いパフォーマンスをするための身体づくり』はS&Cコーチの大きな仕事の1つです。ただ、僕が1番大事にしているのはその前提にある “ケガをさせない身体” をつくることなんですね。ジャンプ力を上げることや足を速くする以上にそれが自分の使命だと考えています。それでも避けられないケガはあるわけで、その場合は治療過程において再発しない身体をつくること、さらにそれ以外の部分を含めてより良いパフォーマンスができる身体をつくること。自分の仕事のメインはそこにあると思っています」
ケガをさせない身体つくりはまず選手の身体を知ることから始まる。多田さんが例に挙げたのは原修太の『右第五中足不全骨折』という足首の大ケガ。時期はBリーグが開幕した直後であり、ルーキーだった原の身体と多田さんが向き合い始めたころだった。