開幕戦はベンチスタートながら25分出場し、12点/5アシストを記録。そのうち9点は、第4クォーターだけで挙げている。ブランクのせいか、また久々の舞台に気持ちが高ぶってしまったのか、前半はミスが目立った。「攻めが単調になっていたので、ボールをみんなに預けてから組み立ててもいいんじゃない」と43歳のベテラン、宮田諭が的確なアドバイスを送る。塚本自身も「しっかり状況判断することが大事だ」とハーフタイムにリセットし、後半の活躍につなげていく。「自分の特徴でもあるリングにアタックすることはすごく大事にしています」という積極性をさらに増しつつ、まわりを生かしながらチームを引っ張っていった。
7人の新戦力を迎えた「このチームを早く噛み合わせて、チーム力を高めていけば、どんなチームにも勝てると信じている。このリーグの中で一番成長できるチームとも思っている」と石田ヘッドコーチは力を込め、目標とするB3優勝、そしてB2昇格を目指す新シーズンが幕を開けた。
B3は成長する場であり、1年でも早く抜け出さなければならないアリ地獄のような場所
先発ポイントガードは、横浜EXで6年目を迎える田口暖。19歳からプロとなり、塚本とは同い年の24歳。ひとつ下の荒川、そして約20歳離れた宮田の4人の司令塔について、「個性がバラバラ」という石田ヘッドコーチは以下のように期待を込めた。
「田口はバランスを取りながらバスケットができるタイプ。塚本は今日も活躍してくれたように、自分で得点を思い切って引き出すことができる。荒川はパスやしなやかなドライブなどセンスがあり、相手を翻弄できる。宮田は思い切りの良さがあり、試合に勝つためにやるべきことがわかっている。4人それぞれが持ち味を表現し、その中でも若手である田口、荒川、塚本がこのリーグで存在感を発揮して、のし上がっていく存在になって欲しい。その気持ちを前面に出していけば、このチームはもっともっとおもしろくなっていく」
今シーズン、B3のロスターを見れば、塚本や荒川をはじめ、近年の大学バスケでその活躍を見てきた選手が多い。その名や姿を見てうれしく思うとともに、彼らがこの現状を甘んじていないか不安に感じる。彼らはプロ選手であり、プロクラブの一員かもしれないが、B3はプロリーグではない。バスケットLIVEでの中継もない(※B3TVで配信中)。ここを足がかりに自らの力でB2やB1へと引き上げるか、さもなければアピールして上にいるチームにプロ選手として引っ張られるか。石田ヘッドコーチは横浜EXを通して、それを体現しようとしていた。
「選手自身が感じなければならないのは、『自分がやらなければいけない』『自分でこの状況を打開しなければいけない』ということ。それは日本人選手も外国籍選手も、ベテランも若手も同じである。それぞれが引っ張っていって欲しいし、このチームのメンタリティーとしていち早く根付かせて、それぞれがプロのキャリアを進むための第一歩にして欲しい。ここで自分自身の力を証明して、這い上げって行く気持ちが大事であり、それをしっかり表現することを期待している」
今シーズンを終えた段階で、B2へ自動昇格できるのはそのライセンスを持つ上位2クラブのみ。クラブと選手とスタッフが一丸となり、覚悟を持って取り組まねば、アリ地獄のようなこの場からなかなか抜け出すことはできない。あらためて、そんな厳しい場所であり、昇格へ向けて地力をつけ、成長できる舞台であって欲しいと思った開幕戦だった。
文・写真 泉誠一