『1』を『10や100』にしていくことが使命
日本におけるアナリスト業界において、「我々は第二世代」と千葉ジェッツの木村和希氏は言う。様々な競技でこの職種が増えており、バスケ界における第一世代は、アジアカップで女子日本代表の指揮を執る恩塚亨ヘッドコーチ(東京医療保健大学)や、今年3月のBリーグ U15チャンピオンシップで頂点に立った名古屋ダイヤモンドドルフィンズ U15チームの末広朋也ヘッドコーチ、琉球ゴールデンキングスの森重貴裕アシスタントコーチらが挙げられる。
「アナリストという仕事を『0』から『1』に確立してくれたのが第一世代です。何もないところを開拓してくれたからこそ、自分たちもこうしてプロリーグでアナリストとして活躍できているわけです。だからこそ、我々の世代はその『1』を『10や100』にしていくことが使命であり、しっかり全うしていけるようにしたいです」
今シーズンの千葉ジェッツには、日本代表のテクニカルスタッフとして活躍した前田浩行アシスタントコーチが加わった。さらに、大阪エヴェッサから小川凌氏を迎え、ビデオアナリストは2人体勢となり、その地位が確立されつつある。5シーズン目を迎える木村氏は、「ジェッツしか経験はないですが、幸いなことに毎年新しいコーチが入って来てくれるので、それだけでもかなり勉強になっています」という環境で、研鑽を積んできた。ゾラン・マルティチ アシスタントコーチにはヨーロッパのスタイルを、大村将基スキルディベロップメントコーチにはその名の通りスキルの部分を、そして前田アシスタントコーチからは世界での戦い方を貪欲に学んでいる。
そんなコーチングスタッフたちとの連携も確立されており、「例えば、アスレティックトレーナーに受傷シーンの映像を共有したり、スキルコーチは我々が分析した映像を使っています。認知を高めることが我々の一番の仕事であり、そのために必要な素材があればデータとして提供しています」という結束力が千葉の強みになっている。
スタッツを見れば分かるBリーグの変遷
「この5年間、3ポイントシュート成功率が、勝敗に与える影響が大きいことは変わっていません。変化があった項目として5年前は影響が大きかったフリースロー獲得率は年々下がっていき、昨シーズンにはオフェンスリバウンドの影響がかなり高まっています。これまでは、大型のビッグマンが起点となってペイントエリアで得点し、そこをファウルで止めてフリースローを与えることが勝敗に影響していました。しかし、近年はアウトサイドから打てるビッグマンが多くなってきたこともあり、オフェンスリバウンドの影響が高まっているということがスタッツからも読み取れます」
スタッツがBリーグの変遷を雄弁に語ってくれた。ペリメーターの外国籍選手が増えたこともそのひとつの要因ではあるが、日本人選手が積極的にゴールへと向かいはじめた良い兆候である。2019-20シーズンまでの千葉はフィールドゴールを高い確率で成功させ、得点の質の高さで勝機を見出していたが、昨シーズンは変化が見られた。