「琉球の選手たちはタレントが揃っていました。彼らに対し、自分の知識や経験を伝えながらも、選手それぞれが培ってきたものもなくしたくはないと思ってコーチングをしていました。吸収力がとても高い選手たちだと感じました」
三遠、琉球で着実にキャリアを積み重ねながら、今シーズンより王者奪還を目指すアルバルク東京でスキルコーチとしての手腕を発揮する。認められつつある役職だが、「まだまだ層が薄い」と田中コーチは現状について語ってくれた。
「ようやくビデオコーディネーターというコーチの役職が確立されてきましたが、スキルコーチはハンドリング練習やシューティング時のリバウンドを取る人と理解されている方がまだまだたくさんいるのが現状です。我々は、スキルの成長を手助けするコーチであり、それに関してのスペシャリストです。ただ練習させるわけではなく、チームの戦術を含めた細かいところまでを見て、確認しながら練習をすることにプライドを持っています」
スキルコーチの重要性を語る以前に、その役割や存在意義がまだまだ理解されていない。そこが分かってくれば、一気に日本全体に広まっていく可能性を秘めており、それを伝えるのもまた田中コーチらの役割である。
インタビューを行った時点では、A東京に加わっってから1ヶ月強だったが、「コーチは一人ひとりがスペシャリストであり、素晴らしい選手が揃ったチーム」という印象を受けている。練習に参加し、最初に感じたのは「内容の濃さと雰囲気のすごさ」だった。A東京はシーズン開幕までの準備期間こそ重要視しており、それが強さの裏付けでもある。コロナ禍の昨シーズンはそこに時間を割くことができなかった。「シーズンがはじまってしまうと、特にあたらしいことにチャレンジすることはありません。夏から鍛え上げたものを徹底的に突き詰めて行くだけです」と田中コーチが言うように、この時期に万全な準備をすることがスキルコーチとしての大きな役割でもある。
「まずはルカ(パヴィチェヴィッチ)ヘッドコーチの目指すバスケを1日も早く理解し、そしてA東京のバスケットスタイルを把握することで、もっとこのチームにフィットできるスキルコーチになっていきたいです」と様々なことを吸収しながら、田中コーチ自身も成長につなげていくシーズンとなる。
アルバルク東京 田中亮アシスタントコーチ/スキルコーチ
スキルの成長を手助けするスペシャリスト
前編 https://bbspirits.com/bleague/b21082602/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b21082701/
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE