「成長を見ることがすごく好き」スキルコーチは幸せを感じられる仕事
数年前、田中亮コーチが現役時代に、オフシーズンのトレーニングを見る機会があった。ラダーなどのアイテムを持ち込み、自らメニューを組んで汗を流していたその姿こそが、今につながっていた。スキルコーチなどから師事を受けたことは一度もないとのことであり、自らの経験やアイディアがこの仕事を通して開花させている。
「現役時代は特にオフェンス練習をしているときに、所属チームの中で自分はどういう場面でシュートを打つのか、どういうところの技術が必要なのかを考えるタイプでした。試合ではこういうシチュエーションがあるから、そこは自分が特化できるようにと思って練習していたのがきっかけです」
他のチームメイトとともに、ワークアウトする機会が増える。しかし、当初は自らがレベルアップするために練ったメニューであり、ポジションや役割の違う仲間にはフィットしないことに気付く。「そこで、その選手の特徴やさらに伸ばせるところを話し合いながら、オリジナルのワークアウトメニューを作ったときが最初です」とスキルコーチの原型が見えた。「選手の成長を見ることがすごく好き」という感情が原動力でもある。
「現役時代はチームの成長や勝利に対する気持ちはもちろん強かったですが、それにプラスして、1人の選手が成長する過程や結果に対しても自分はエキサイトする部分だと感じました」という思いを、スキルコーチという生業に昇華させた。
「自分にとっては幸せを感じられる仕事です。大変なこともたくさんありますが、幸せな毎日を過ごすことができています」
チームの戦術を細かく確認しながらコーチング
2016-17シーズン、愛媛オレンジバイキングスを最後にユニフォームを脱ぎ、翌シーズンより三遠ネオフェニックスでスキルコーチとして着任。仙台89ERSでプレーしていたときの河内修斗ヘッドコーチ(現・アルティーリ千葉 アソシエイトコーチ)が三遠にいたことで、将来について「コーチの道を考えています」と相談する。当時の三遠を指揮していた藤田弘輝ヘッドコーチ(現・仙台89ERS)を紹介され、目指すべきコーチ像を問われると、「選手のワークアウトを見るエキスパートになりたい」と宣言。ストレングスコーチとスキルコーチの分担制にしたい藤田ヘッドコーチの思いと一致し、第2のバスケ人生が幕を開けた。昨シーズン、藤田ヘッドコーチとともに移籍した琉球ゴールデンキングスでは、西地区チャンピオンに導いている。