「ここから積み上げていくしかない。こういうゲームに勝つためにはこれからどう練習をしていくかが重要であり、この舞台まで来なければそれもわからないものがある。今回プレーオフに来たという財産を、特に若い選手たちには持ってもらって、その中でプレーオフに勝つための練習を続けていかなければならない」
桶谷ヘッドコーチはキャプテンの月野雅人や寒竹隼人ら、多くのベテランを再びコート上で輝かせた。彼らが汗をかいたことで、「リーグで1番コミュニケーションが取れているチームであり、リーグで1番ハードワークするチーム」になった。コロナ禍やケガなどいろんなネガティブ要素もあったが、「言い訳することなくよくがんばってくれた。ベストチームだと思っている」という指揮官の言葉が、今シーズンの仙台を言い表していた。
越谷アルファーズ「優勝できるチームだった」
後半、越谷は次々と選手を送り出し、疲れが見える仙台の体力を削っていった。高原純平ヘッドコーチは、「我々が最後まで戦い切れたのが今日の勝因になった。全員が戦ってくれたことに感謝したい」と選手たちを称賛する。ビハインドを背負ってもあきらめない姿勢は、今シーズンを通して徹底してきた。どんなに点差を開かれ、追いつけないような試合でも主力を使い抜く。それは、高原ヘッドコーチと選手たちとの約束でもあった。B2に昇格して2年目の越谷がプレーオフに出場し、3位で終われたのも常にあきらめずに戦い抜いた証である。
すでに群馬と茨城がB1昇格を決め、B1ライセンスが交付されなかった越谷にとっては、モチベーションを定めにくい3位決定戦でもあったはずだ。仙台の桶谷ヘッドコーチは、両チームとも大きなケガ人を出すことなく終えたことに安堵していた。ラストゲームに向け、高原ヘッドコーチは「今日はみんなでファイトしよう。その中でも今までスタートで引っ張ってきた選手がしっかり戦うこと」を強調し、コートに送り出す。しかし、先手を取ったのは仙台の方だった。
ハーフタイム、13点差をつけられた越谷のロッカールームに悲壮感はない。高原ヘッドコーチは「今までの2試合が33−31、33-33というゲームだったが、今日は40点も取られていることを指摘した。自分たちの点数が取れていないことに選手たちがフォーカスしていたので、まずはディフェンスをやろう」と指示を出し、最後のコートに送り出す。第3クォーターは6点、第4クォーターも7点に抑えるチームディフェンスで逆転し、ホームで有終の美を飾った。
今シーズンは長谷川智也やバッツらB1経験者を多く補強し、シーズン終盤にはテクニカルアドバイザーとして桜木ジェイアールを迎えた。勝利で終えたシーズンだったが、もしかすると3位という結果は不本意だったかもしれない。高原ヘッドコーチは「優勝できるチームだった」と力を込め、同時に準決勝で勝ち切れなかった群馬戦を悔やむ。しかし、結果は変わらない。仙台がアップセットしてくれたおかげで、最終日をホームゲームで迎えることができた。
「3位という結果ではあったが、ホームでファンの皆さんの前で最後に勝利を届けられたのは良いシーズンだったのかな」
悔しさや自信などは、これからシーズンを振り返りながら噛み締めることになる。B1から降格がない来シーズンは、3位決定戦に残った越谷と仙台がB2を牽引していく。同時に、追われる立場にもなる。
文・写真 泉誠一