「アルバルクらしさが足りないシーズンだったと個人的にも感じています」というザック・バランスキーはその理由について、こう言及する。
「ターンオーバーや審判と話してディフェンスに戻るのが遅くなったり、本当に小さなミスが積み重なり、今まで徹底していたディフェンスも緩くなっていました。個人的にも、安定した活躍がシーズンを通してできずに、ローテーションを外れる時期もありました。チームを安定させるのが自分の役割なのに、自分がアルバルクらしさを与えられなかった試合も多かったです。コロナとケガ人が影響したとは言っていますが、そこがメインではない。一人ひとりの小さな意識のひとつひとつの重なりが足りなかったです」
シーズン前にしっかりと追い込むことで、選手それぞれが自信を得て、チーム力に変えるのがA東京の強さである。しかし、これまでもシーズン中に崩れることがなかったわけではない。その時に鼓舞し、チームを引っ張ってきた正中キャプテンの存在は大きかったと言える。「一人ひとりのリーダーシップが足りなかった」とバランスキーはさらなる反省点を挙げ、来シーズンは自らチームを引っ張ることを誓った。
「逆境の多いシーズンでした」というのは、須田侑太郎だ。陽性者が続出し、その度に試合が延期や中止となり、練習すらできなくなる。しわ寄せのようにシーズン終盤は過密日程を余儀なくされ、全てのチームや選手にとってもモチベーションやコンディションをキープするのが難しいシーズンとなった。逆境が多かった中でも「みんなでファイトをしたり、イレギュラーのことが起きたり、ケガ人が続出して結局最後も全員が揃わなかったけど、その中で得た感情や経験は貴重であり、なかなかないことです」と須田にとっては得るものもあった。しかし現実には、「それを跳ね返し続けることができなかったのはすごく残念。タフな状況に追い込まれた中でもリーダーシップを発揮したり、もっともっとアルバルクらしさを出すことを1シーズン通してできなかったのが悔しかったです」と続ける。この経験を踏まえ、「もう一皮も二皮もむけたチームにすることが大事になります。そうなることではじめて、この悔しいシーズンがあったから違う姿を見せることができたという未来にしたい」と前を向いた。
新型コロナウイルスに翻弄された厳しいシーズンだったが、それはA東京だけの話ではない。これから迎えるチャンピオンシップやすでにはじまったB2プレーオフでは、新たな陽性者を出すことなく無事に終わることを祈るばかりだ。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE