── それでも当時の竹内さんは国内ではだれもが認める『リバウンドが強い選手』であり、しっかり結果も出していました。世界を相手にして1人で競り勝とうという意識は捨てたとおっしゃいましたが、国内においても同じ考えだったのでしょうか。
たしかに若いときはジャンプ力も今よりかなりあったので取れていたところもありましたが、やっぱり世界を経験したことで徐々に意識が変わっていきました。自分が取れないと思ったらマークマンを飛ばせないようにするとか、チップして味方に取ってもらうようにするとか、そういう方向で勝負するようになりましたね、だいたいリバウンドってボールがどこに跳ねるのかわからないじゃないですか。よくボールが落ちる場所を予測するって言いますが、経験から言って予測どおりにボールが落ちる確率は数パーセントです。アンラッキーで相手に取られることもありますよね。今僕が意識しているのはまずは相手をできるだけペイント内に入れないようにすること。ペイント内に入られたらボードの裏に押し出すようにすること。そうすると(味方がリバウンドを取ったとき)相手のビッグマンの戻りが遅くなりますから速攻が出しやすくなるんですね。
── なるほど。そういったことを含めて「リバウンドはチームで取るもの」だと。
僕はそう思っています。今のリバウンドランキングの1位は琉球(ゴールデンキングス)のジャック・クーリーですが、彼は際立って身体能力が高いわけじゃない。けど、体の幅とポジション取りの上手さを生かして自分より身体能力が高い選手にも競り勝ちます。手に触ったボールは絶対取るというメンタルの強さも感じますが、やはり琉球には彼にリバウンドを取らせる(チームの)システムがあるような気がします。周りがしっかりボックスアウトをすることで彼が(リバウンドを)取りやすい状況を作っていると思うんですね。もちろんさっき言ったクーリー自身の能力もあるし、しゃべったことはないんで彼がリバウンドに対してどういう考えを持っているかはわかりませんが、少なくともプレーから意識の高さは伝わってきます。そういった意味では(アイザック)バッツ(越谷アルファ―ズ)も同じですね、彼も特別身体能力が高い選手ではないですけどリバウンドに対する意識はすごく高い。今B2のリバウンドランキング1位なのも納得できます。そういうのを考えると、リバウンドは個人の身体能力だけじゃ計れないなと思うんですよ。そりぁ身体能力は高いに越したことはないですけど、チームにシステムがあるならそれに応える意識も必要。周りの自己犠牲も必要。
── 自己犠牲というのは場面によって自分が盾になるということでしょうか。
そうです。それが「チームでリバウンドを取る」ということであって、僕自身そういう役割ができなければ生き残れないと思っています。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE