フィフティーフィフティーのボールは自分のボール(前編)より続く
「バスケットは楽しいもの」という中山の言葉を聞いて思い出したのは彼が大学4年次のインカレ決勝だ。正しくは決勝直前のこと。頂上決戦の舞台裏にはいつもより少しピリピリした空気が流れ、選手たちの表情も心なしか硬かったが、中山だけは違った。声をかけると返ってきたのは普段どおりの明るい声。「自分ができることを100%出せるよう頑張ります。自分、負けるのが大嫌いなんで!」 ── 22歳の中山はそう笑ってコートに向かった。プロ選手となり、「悩みや葛藤も味わった」と言うが、おそらく試合に臨む姿勢、気持ちはあのころと変わらないのではないか。チームのために自分がするべきことを全力でやり通す。信条とする「フィフティーフィフティーのボールは自分のボール」は、そのままコート上の中山を表す言葉のような気がする。
高いスキルを持っている選手だけが活躍できるとは思わないんですよ
── 中山さんは当然のことながらバスケを楽しみながらも悩みや葛藤はあると言われましたが、それはどんなことなのか具体的に教えていただけますか?
中山 葛藤と言えるかどうかわかりませんが、僕が秋田に入ってすぐチームがB2に降格しました。そのころ同期の(伊藤)達哉はB1の京都でやっていたので同じ舞台に立てないことにちょっと悶々とするものがありました。なんかモヤモヤした気持ちというか。
── それでもその年のB2ではスティール王を受賞し、B1に返り咲いた翌年も同じくスティール王に輝きました。それも「自分が貢献できることは全てやる」という結果の1つかもしれませんね。
中山 はい。スティールは大学のころからわりと得意で自分が武器にしていたものです。スティールするとイージーバスケットにつながることが多いですし、そこで貢献したいという気持ちはずっと持っています。
── スティールのコツはあるのですか?
中山 コツですか?自分の場合だと(スティールを)誘発させようとするときと感覚的に取れると思って仕掛けるときがあります。ただ絶対ギャンブルはしません。スティールに行ったことで自分のマークマンにやられてしまったら意味がないし、チームに迷惑をかけることになりますから。あっ取れないかも?と思ったら行かないと決めています。行くのは取れると思ったときだけ。そう思ったときはためらわずに行くし、結果的に成功することが多いような気がします。