10年が経過し、二つのリーグが統合してBリーグが誕生した今、「やっとバスケットボールリーグというものができたと感じます。だからこそ、B.HOPEの活動は重要です。社会貢献活動を通じてできることは何か、本当にできることは何か、支援を求めている人に対して届けられるものは何かを考え続けていかなければいけないです。1回の活動で終わりではなく、続けていくことで次に何ができるのか、さらに必要なことは何かを考えるスタート地点になります。必要な人たちに届けはじめることで、次に必要な人たちも声を挙げやすくなり、そこからどんどん広がっていきます。バスケ界として、やっと社会貢献ができるようになったことが大きな変化だと感じます」(伊藤氏)。
上原GMも「バスケ界の支援活動は点でしかなかった」と当時の状況を認める。茨城でのクリニック以外に、「渋谷でチャリティイベントもやりました。渋谷の駅前に選手たちが立って募金活動なども行い、そこで集めた義援金を赤十字に寄付しました」という活動も行っていた。これまではプロ野球やJリーグと比較すれば、バスケの知名度は低く、社会貢献活動も手探りでしかなかった。
「しかし今では、Bリーグが先頭を切って社会貢献活動ができているのもバスケ界が盛り上がってきた証拠であり、メジャースポーツになってきていると感じています。10年前は点だった活動が、バスケ界が組織立って広く伝えられるようになったことはすごくうれしいことです。クラブとしてもリーグの協力を受けながら、今後も社会貢献活動を続けられると思うと、自分たちがこれまでやってきたことも意味があったと思っています」(上原GM)
コロナ禍の今、2児の父でもある伊藤氏は子どもたちが夢を持つことができない状況を危惧するとともに、「どこまで夢を見て良いのかを大人やまわりの顔色を見ながら考えてしまっている子が多いように感じています」。今回のクリニックを通じて、「今はまだ夢や将来なりたいことが決まっていなくても、いろんなことを積極的に取りに行って欲しい。一歩踏み出すことでいろんなことが自分の中に入ってくるから、これからも積極的に取りに行きながら自分の夢に向かって進んで欲しい」と参加者へメッセージを送った。
クラブがバスケを通じて地域に元気を与え、そこに住むファンが選手やチームを支える絆が年々深まっている。「より一層、茨城県内の子どもたちや地域の方々を大事にしなければいけないと感じています。コロナ禍でもバスケを通じて、少しでも笑顔になれるような取り組みを模索しながら今後も続けていきたいです」という上原GMは、地域とのつながりをさらに強くしていく。B.HOPEがきっかけとなり、社会貢献活動を活性化することで、クラブが地域の象徴へと昇華する。
茨城ロボッツ 上原和人GM × 元日本代表 伊藤俊亮
東日本大震災から10年 ── 茨城の地でつながるバスケの絆(B.Hope HANDS UP!)
前編 https://bbspirits.com/bleague/b21040501/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b21040601/
文・写真 泉誠一