あたりまえにバスケできることはあたりまえじゃないんだよ(前編)より続く
2度目のB1の舞台で戦い抜くために
Bリーグが開幕した2016-17シーズンにB2所属チームとしてスタートを切った島根スサノオマジックは、11月から3月にかけて破竹の21連勝を記録し西地区優勝を果たした。プレーオフ決勝では西宮ストークスに敗れたものの1年目にしてB1への自動昇格を決める。だが、ヘッドコーチをはじめ選手が大幅に入れ替わった翌年は西地区最下位に沈み残留プレーオフにも敗れ再びB2に降格。続く2018-19シーズンはワイルドカード枠でプレーオフ進出を果たし、東地区の覇者・群馬クレインサンダーズと中地区の覇者・信州ブレイブウォリアーズがB1ライセンス取得の条件に満たなかったことから自動的にB1昇格の切符を手にすることができた。改めて振り返ると、B1開幕以来アップダウンが激しいシーズンを送ってきたと言える。獲得した2度目のB1の舞台は何としても手放したくない。そのために必要なのは『ゲームの流れを読みコントロールできるベテランガード』であり、山下へのオファーはそれを期待してのものだったではなかろうか。自分が担うべきものを十分理解した上で本人はこう語る。
「正直、昨シーズンは島根のプレースタイルになかなかアジャストできずに苦しみました。ディフェンスに重きを置いた展開もそうですし、オフェンスでは自分の持ち味である3ポイントシュートが全然入らなくていろいろな意味で自分が求められていることに応えられないままシーズンが終了してしまった感があります」
ただ、それをネガティブにとらえてはいない。「ポイントガードとしてチームを作っていく難しさは福岡でも経験しています。やっぱり東芝のような伝統のあるチームだと長年に渡って築いてきた核になるようなものがあって、選手は毎年その核に沿って頑張ればいい。だけど、新生チームになると集まった選手の “頑張り方” が違うんですね。同じバスケットなのにそれぞれが自分のルールを持っていて、みんなそのルールが正しいと思っている。確かに間違っているわけではないけど、1つのチームを作っていくのはそういうことじゃないぞ、みたいなのは最初に感じました。それを伝えて、理解してもらって、みんなで核となるものを作っていくのは容易なことではありません。けど、やりがいはあります。今シーズンの島根も外国籍選手を含めると10人ぐらい新しい選手が入ってきて、そういった意味では新生チームです。みんなで核を作っていくチームなんですね。試行錯誤しながらですが、ヘッドコーチ代行の河合(竜児)さんの下でいろいろな選手が得点に絡めるようなシーンも増えてきました。若い選手たちは基本的にまじめな努力家が揃っているし、みんなが同じ方向を向くことでまだまだ強くなれる可能性を秘めたチームだと思っています」
コートの中とコートの外での明るい材料は、帰化選手枠で入ったウィリアムス・ニカの存在と大手企業のバンダイナムコエンターテインメントが運営に参画してくれたことだという。「ニカと外国籍選手が揃ってコートに出たときの展開はうちのアドバンテージの1つになると思いますし、バンダイナムコさんがスポンサーとなってくれたことで今まで以上にバスケットに専念できる安心感が生まれました。2つとも島根にとって大きなことです」