佐々木自身、シーズン序盤は「自信を持って3ポイントシュートを打つような選手ではなかったです」と消極的だった。しかし、シュートタッチが良くなるにつれて、試投数が増えていく。本数こそまだ少ないが、42.6%(平均1.0/2.2本)の確率で3ポイントシュートを決めている。「技術よりも気持ち面で強くなった」という変化により、「開いたら絶対に打つことをここ数試合は心がけてプレーしています」。平均9.5点をマークし、多くの経験を積みながら熊本の戦力として頭角を現しはじめた。
茨城戦では、2011年のインカレで全国3位に導いた天理大学の先輩であり、レジェンドと崇める平尾充庸との対戦が実現した。「Bリーグの舞台でマッチアップできるのが信じられないことですし、胸が高鳴る場面もありました。ものすごく楽しかったです」という佐々木に対し、7歳離れたレジェンドも一目置いている。
「彼が大学の途中で海外留学し、そのときに天理が少し弱くなったのも知っています。マッチアップをしたけど、まだまだ負けるわけにはいかないので全力で止めに行きました。やはりシュート成功率も身体能力もズバ抜けているものがあり、要注意人物だと感じています。佐々木選手だけではなく藤澤(尚之)選手や、(ファイ)サンバちゃんは明徳義塾高校から一緒だし、熊本には天理大学出身がすごく多い」
小学生のときにバスケをはじめるきっかけとなった幼馴染も茨城にいる。「友達が相手にいる感じがして、楽しかったです」と、ミニバスから豊浦高校までともにバスケに打ち込んできた中村功平との再会を果たす。この日の対決は、中村の方に軍配が上がった。ベンチスタートながら13点を挙げ、チームを勢いづけた活躍によりMVPに選ばれている。目の前で活躍する幼馴染の姿に、「正直イラッとしましたね。明日はやり返したい」と意気込んでいた。しかし、翌日は茨城に新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受けた選手が出たことで、リベンジの機会はお預けとなってしまった。
熊本地震から5年 ── 被災地のことを学んで入団を決意
3月20日の試合中、水戸では震度4の地震があり、試合は一時中断された。東日本大震災から10年が経った3月は、「B.Hope HANDS UP! PROJECT」を発足し、Bリーグや各クラブが様々な社会貢献活動を行なっている。この日の茨城では、千葉ジェッツや日本代表などで活躍した伊藤俊亮氏を招き、防災を取り入れたバスケットボールクリニックを実施していた。
来月4月14日、熊本地震は5年目を迎える。これまで熊本とは縁もゆかりもなかった佐々木だが、「ヴォルターズへ入団するにあたり、被災された方々から当時の大変だった話や小林選手がボランティアに積極的に参加し、皆さんに貢献したという話もたくさん聞きました」と地元について学んでいた。
熊本は4月10日のホームゲームで『くまもと元気祭~熊本応援プロジェクト~ presented by 再春館製薬所』を開催し、元気を届ける。昨年はコロナ禍により、試合する機会さえ失われた。「最近も地震が多くなっており、被災された方々の思いを感じ取りながら、僕らは試合を通じて元気を与えることしかないと思っています」という佐々木はプロとしての自覚を持って、コートに立ち続ける。
文・写真 泉誠一