「いろんなところにぶつかったり、それでも妥協せずにやっていくことを積み重ねていかないと、強い文化はできないと、竜馬と話して改めて感じているところです」
選手としても、人間としても、またベテランと呼ばれようとも、桜井は今も多くのことを吸収しようとしている。それがまた楽しいのだと言う。
「楽しいし、やりたいから、まだやっているんです」
走れて、飛べていたときは、自らの能力に溺れて、チームが求める戦略・戦術を徹底できていなかったかもしれない。しかし今は違う。プレータイムが限られているなかで、スタッフから提示されたものを率先し、徹底してやらなければいけないという思いでコートに立っている。
コートだけではない。
「ベンチにいてもベンチでやるべきことはあります。強いチームのベンチというのはすごく雰囲気がいいですし、毎回みんなで立ち上がっていますよね。でもウチはまだ、それさえもできていなかったりするので、そういう役割もしていきたいですね」
飛べなくなった桜井良太は、ただの桜井良太ではない。飛べなくなっても、レバンガ北海道に欠かせない選手として、チームのために尽くそうとしている。
インタビューの終わりに、桜井にケガだけは注意してほしいと告げると、こう返ってきた。
「ありがとうございます。足もよくなってきていますし、ウォーミングアップですけど、ダンクもできるようになってきています」
じゃあ、今シーズン中に試合で一発お願いできますか?
「狙っていきたいですね」
宮崎駿が作画を担当した映画を参考に、もうワンシーン。
「桜井め、まんまと盗んでいきおった」
「いえ、あの方は何も盗んでいませんわ」
「いや、あいつはとんでもないものを盗んでいきました」
「……?」
「レバンガ北海道ファンとバスケットボールファンの心です」
そんなラストシーンを心待ちにしている。
レバンガ北海道 #11 桜井良太
スラムダンクをもう一度
前編 https://bbspirits.com/bleague/b21031601/
中編 https://bbspirits.com/bleague/b21031701/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b21031801/
文 三上太
写真 B.LEAGUE