ディフェンスはチームの生命線
いきなりこう書くのは本人に失礼かもしれないが、長谷川技は対戦するチームのファンにかなり嫌われているのではないかと思う。理由は毎試合エースをマークするあのディフェンスだ。執拗に、徹底的に、相手に仕事をさせない容赦ないディフェンス。川崎ブレイブサンダースの佐藤賢次ヘッドコーチは長谷川技についてこう語る。
「間違いなくうちのベストディフェンダーです。ディフェンスというのは数字には表れませんが、チームの生命線になるもの。ただ激しく付けばいいというのではなく、ポジショニングやプレーを読む力が必要になります。まさしくその力が備わっているのが長谷川。彼のディフェンスを見るときはぜひそこに注目してほしいですね」
長谷川に対する信頼度の高さが伝わる言葉だが、当の本人は自分のディフェンスについてどのように考えているのだろう。
「相手のエースを抑える役割を自分が担っていることはもちろん承知しています。賢次さん(佐藤ヘッドコーチ)もそこを期待して出してくれていると思うので、それに応えたいという気持ちも当然あります。でも、『やってやるぜ!』みたいな意識は全然なくて、なんていうか、普通ですね(笑)。コートに出ても、まあ普通に守っているだけです」 ── 普通…なのか。それでもやっぱり内に秘めた闘志はあるはず。「ありますよね?」と、半ば念を押すように聞いてみると「うーん」と、まじめな顔で考え込んだ。「内に秘めた闘志?闘志?うーん、そういうの、ちょっとはあるかなあ」 ── ちょっと…なのか。目の前で首を傾げる長谷川と川崎が誇る鬼のディフェンダーがなんだかうまく重ならない。
〇歳からスタートしたバスケット人生
岩手県出身。男ばかり4人兄弟の末っ子として育った。
「兄ちゃんたちは全員バスケットをやっていて、1番上の兄とは12歳違うので多分赤ん坊のときにはすでにどっかの体育館でバスケットを見てたんじゃないかと思います。無理強いされたわけではないですけど、バスケットをやるのはあたりまえみたいな家だったから野球をやりたいとかサッカーをやりたいとか考えることもなかったですね。気がついたらバスケをやっていたみたいな…」
一回り上の長兄は193cm、8歳上の次兄は191cm、実業団やBリーグ(JBLオーエスジーフェニックス東三河、大塚商会、越谷アルファ―ズ他)で活躍した5歳上の武は195cm。「4人の中で僕が1番小さい(190cm)し、歳も離れているからいつも兄ちゃんたちを見上げて育ちました(笑)。やっぱり3人の影響力は大きかったですね」
中学3年次に能代工業高校から誘いの話があったときも背中を押してくれたのは兄たちだったという。「能代工が全国でも有名な強豪校だとは知っていましたが、自分としてはそれほど行く気はなかったんです。けど、兄たちがみんなで『行った方がいい』『行くべきだ』と言うので、じゃあ行こうかという気になりました」