ガマンする展開は必然的に長くなるスタイル
「ルーズボールがお互いの強みであり、どちらが取り切れるかという試合だった。何本かは取られた場面もあったが、しっかり集中してチーム全員がそこに向かってくれた結果が勝ちにつながった」と安齋ヘッドコーチが言うところの差が、勝敗を分けた。
ルーズボールをしつこく追いかけたおかげで、「こんなにおもしろくないスコアになったのかな」と振り返ったのは渡邉裕規である。オフェンスが機能しない宇都宮に対し、途中出場から3ポイントシュートを決めてチームを勢いづけたこの試合の立役者だ。「ガマンしてガマンして、しっかりとディフェンスで抑えてからブレイクを出す」泥臭いプレーこそが宇都宮のスタイルであり、ひとつの勝ちパターンでもある。宇都宮で8シーズン目を送っている渡邉にとっては、納得のいく勝利でもあった。
「出だしは少し悪かったですが、ピック&ロールを使ったり、しっかりコールをして遂行力が高ければ問題なくオフェンスはできます。負けるときはオフェンスもディフェンスもうまくいかず、悪循環が続く。今日もそうなりそうな時間帯もあったが、ベンチメンバーも含めて出ている選手がしっかり集中を切らすことなくできたのが良かった点です」
ディフェンシブなチームでも、上位にいるチームは平均80点を超えている。だが、宇都宮は79.7点と少ない。過去2連覇しているアルバルク東京が、優勝していたときは同じように80点を切っていた。さて、この数字は何を物語っているのか ── 今シーズンの結果が出るその日まで注視したい。
インサイドで負けなかったのは、今の良い状況を象徴
敗れはしたが、「重たいオフェンスの中でもディフェンスの足は止まっていなかったし、最後の最後まで走り続けてリバウンドも互角(ともに43本)だったので、川崎らしさは最後まで見せられた」と佐藤ヘッドコーチは評価する。ファジーカスを欠き、この日は前半でマティアス・カルファニがコートを去るアクシデントにも見舞われた。それでも首位の宇都宮を相手に4点差まで詰め寄り、互角の戦いを見せた。「ここ数試合のチーム状況や練習中の雰囲気、コミュケーションの中で出てくる言葉などには手応えを感じている。58点に抑え、インサイドで負けなかったのは、今の良い状況を象徴している」と佐藤ヘッドコーチが言うように好調さは続いている。
これまでは順位に関して、あまり関係ないと常に話してきた安齋ヘッドコーチ。残り20試合の終盤戦となり、追われる立場の宇都宮だが、そのスタンスには今も変わりはなかった。
「東地区を優勝することはすごく大変なことであり、まだ1/3が残っている状況でチャンピオンシップ進出が決まったわけでもない。残り5試合とか、決まるかどうかになれば意識するが、そこまでは1試合を勝ち切るためにチームで何をすべきか、一人ひとりが何をするかというところを突き詰めていける時間が、まだ20試合あるという感じかな」
週末2連戦がスタンダードなBリーグであり、水曜ゲームも続くスケジュールの中で連敗すればあっという間に順位が変わる。昨日の1試合を終えた時点でも、7位だったA東京が5位に浮上した。来週末には最初のタイトル争奪戦となる天皇杯ファイナルラウンドも待っており、クライマックスへ向けて見逃せない試合が続く。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE