長いトンネルから抜け出せたのは4年生になってからだ。自分が目指すのは『周りを生かすときと自分が攻めるときのメリハリをしっかり付けられるガード』。それを自分の中でしっかり再認識し、「ちゃんとみんなに伝え、今まで以上にコミュニケーションを取ることで、揺らいでいた信頼関係が修復されチームが1つになっていったような気がします」。 “迷わないキャプテン” が率いる青学大は秋のリーグ戦準優勝へと躍進し、納見自身も敢闘賞に輝いた。「4年目に結果が出せたのは、どれだけ苦しんでも腐らずバスケットと向き合ってきたからこそだと思います。それを実感できたことで自分は1つ強くなれたかもしれません」
新潟アルビレックスBBの伸びしろは大きい
今シーズンの新潟には納見と同様移籍加入した柏倉哲平、林翔太郎、大矢孝太朗、新規で入団した西田優大(東海大4年)、水野幹太(法政大4年)、そして特別指定選手枠の伊藤領(東海大3年)など若い選手が揃った。ポイントガードとしては青学大の先輩である柏倉や水野、伊藤、シューティングガードとしては西田と競うことになる。
「練習からいい刺激をもらっています。それぞれプレースタイルが違うから勉強になるし、自分のモチベーションにもなりますね。オフコートではみんな仲がいいんですよ。ご飯に行くのもいつも一緒だし、バスケからくだらないことまでいろんな話ができて楽しいです。自分を含め、いい環境でバスケができているなあとみんな思っているんじゃないでしょうか」。では、 “いい環境でバスケができている” チームが今後勝ち星を増やしていくためにはなにが必要なのだろうか。
「これは個人的にも言えることなんですが、まずはディフェンスの徹底ですね。1人ひとりのマークマンに対してはもちろんですが、1対1で守れないときは2人、3人で守りに行く意識が必要です。オフェンス面ではチームとしてのルールというか、約束事を徹底して個々がやるべきことをやり切る。そこに統一性が生まれれば相手にとって今よりずっと守り辛いチームになるはずです。うちには(五十嵐)圭さん、池さん(池田雄一)、(佐藤)公威さんといったベテランにも若手メンバーにもシュート力があります。ここまでシュート力がある選手が揃ったチームはあまりないんじゃないですか。つまり、それはうちのストロングポイントなのでそこをもっと生かすバスケットができれば上に行くチャンスは十分あると考えています」
もちろん一朝一夕にはいかないだろう。だが、肝心なのは、苦境の中でも下を向かないこと。若いチームの伸びしろを信じて前に進むこと。「ディフェンスの安定やオフェンスでのミスを少なくすることや個人的にも課題は少なくないですが、それでもポジティブな気持ちだけは忘れたくないです。たとえば狙ったシュートが入らなくてもすぐに次のアクションを起こせば、それがチームの勢いに繋がるかもしれないと思うんですよ」。マイナスの状況を決してマイナスのままで終わらせない。そのために練習を重ね、準備して、トライして…。「チームも自分もまだまだこれからです」 ── 納見の最後のひと言が説得力を持って胸に響いた。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE