ファウルも辞さないハードなディフェンスを見せる菊地だが、頭のなかはかなり冷静だという。試合の序盤はファウルのラインを探るためにハードなディフェンスをし、試合の終盤、もう一度チームディフェンスのギアを上げなければいけないときも、率先してハードなディフェンスをする。「これくらいのコンタクトはセーフですよね?」と、その試合の基準を再び示すことで、勝負所でチームメイトまでもがアルバルク基準のディフェンスを、安心してできるのだというのである。
もちろんアウトのときもある。
その笛に対して瞬発的に声を出すこともあるが、それさえも至って冷静。テクニカルファウルになってもいい ── と書くと語弊があるかもしれないが、それでチームがグッとまとまって、勝利に結びつくのであれば、菊地はあえて火中の栗を喜んで拾いに行く。
「ルカと一緒なんです。ルカもバーッと言うときがありますよね? でも意外と冷静なんです。バーッと言って、僕たちを盛り上げようとしている。それで実際にテクニカルファウルを吹かれると、コート上の僕たちが『しっかりやろう』ってなるんですね。それと似ているかもしれません」
よくポイントガードは「コート上のヘッドコーチ」だと言われるが、菊地のようなクレバーなベテランもまた「コート上のヘッドコーチ」である。けっして目立たない “3人目のヘッドコーチ” がいたからこそ、彼らはB.LEAGUEを連覇できたのである。
今シーズンのアルバルク東京は思うように成績を伸ばせずにいる。しかしシーズンは後半戦が始まったばかり。猛追。チャンピオンシップ。そして3連覇へ。カギを握るのは、陰でこそ輝く、強面だが柔軟なベテランかもしれない。
アルバルク東京 #13 菊地祥平
開始5分に花束を
前編 https://bbspirits.com/bleague/b21021601/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b21021701/
文 三上太
写真 B.LEAGUE