バスケットは奥が深い。いわゆる「黄金世代」の1人で、東芝に入った1年目にはユニバーシアードで世界4位という成績をあげた。しかも3位決定戦のカナダ戦ではチームトップの28得点をあげている。しかしそれさえもバスケットの一側面に過ぎない。自分の知らないバスケットがあることに気がついたのである。
「東芝にいるときは東芝のバスケットしか知らなかったわけです。バスケットに対するいろんな角度からの考え方や貢献の仕方が、知識として絶対的に少なかったんですね。そんなときにチームを移ることでいろんなコーチと関わり合いを持てるようになって、いろんなバスケットのやり方、貢献の仕方がわかってきたんです。それこそヘッドコーチが変われば必ずバスケットは変わるし、チームへの貢献の仕方っていうのは、たとえ試合に出なくてもできるかなって、今の自分は思っています」
試合に出なくても貢献できることはある。そう言いながらも菊地は今シーズン、2月8日の時点で全34試合に出場し、うち30試合でスタメン起用されている。馬場雄大が海外に踏み出したとはいえ、同じポジションには須田侑太郎やザック・バランスキー、小酒部泰暉といった若くて、才能豊かな選手たちがいる。それにも関わらず、ヘッドコーチのルカ・パヴィチェヴィッチが菊地をスタートで起用する理由を、菊地自身はこう推測している。
「それこそ、プレータイムや点数にこだわっていないのが一番……変な言い方だけど、一番使い勝手がいいんじゃないかな」
自分のスタッツに目を向けず、チームを最優先にできる。菊地が定義するベテランそのものである。もちろん5人全員がそうであってもバランスが悪い。スタッツに表れる数字でゲームを支配しようとする選手がいるからこそ、陰で支える選手もまた必要になってくる。それが菊地のポジションであり、彼自身もその役割に誇りを持っている。
開始5分に花束を(後編)へ続く
文 三上太
写真 B.LEAGUE