「勝つべき試合を落としたという気持ち」勝久マイケルヘッドコーチ
シーズン中のヘッドコーチは心労が絶えない。勝てないチームもさることながら、上位にいても納得がいかないことは多い。ヘッドコーチが思い描く理想は確立されている。だが、それをコート上で表現する選手たちの遂行力とは、大なり小なり乖離がある。その差を埋めていくのがレギュラーシーズンであり、ヘッドコーチの理想をパーフェクトに体現できたチームがチャンピオンに近づく。理想という名の答えを知っているからこそ、ヘッドコーチは悩み続ける。
半月ぶりにホームに戻ってきた千葉ジェッツは、信州ブレイブウォリアーズを相手に2連勝した。64-70で敗れた初戦の後、信州の勝久マイケルヘッドコーチは「勝つべき試合を落としたという気持ち」と言葉を絞り出す。平均87.4点のオフェンス力を誇る千葉を、70点に抑えたディフェンスは素晴らしいものがあった。「相手がシュートを外しただけのシーンも多かった」と勝久ヘッドコーチが言うように、千葉は3ポイントシュートが2本しか入っていない(9.5%)。それでも身長差で上回る相手に対し、粘り強く守っていた。
信州の問題はオフェンスである。戦うメンタリティーこそ見られたが、「遂行力が悪かったり、19本もしたターンオーバーのほとんどの種類が良くなかった」ことで、勝ちを拾い損ねている。ハーフタイム中、勝久ヘッドコーチはそのターンオーバーに対する改善点をポイントとして挙げた。迎えた第3クォーターはスムーズにボールがまわりはじめ、ペイントアタックしながら得点を重ねてリードを奪う。
千葉はこれまで同様、「まずは自分で守り切る」ことが遂行できていない。逆転された場面では、「もちろんミスコミュニケーションにより、自分たちのルールに則ったディフェンスができていない部分もある。ドライブからレイアップを決められるなど簡単な失点は、自分が守り切るというメンタリティが足りない。レイアップを止める前にやるべきことがやれていない」と大野篤史ヘッドコーチは、これまでと同じ課題を指摘した。
しかし第4クォーター、その流れを食い止めたのが藤永佳昭である。「彼が自分たちのディフェンスを取り戻してくれた」と大野ヘッドコーチは称賛する。「シゲ(田口成浩)が体を張って(アンソニー)マクヘンリー選手のターンオーバーを誘ったり、ギャビン(エドワーズ)もスピードのミスマッチでしっかりコンテストショットまで持っていけた。その積み重ねが必要であり、そのきっかけを作ってくれたのがアキ(藤永佳昭)だった」と続け、ベンチメンバーがディフェンスで盛り返し、勝利を手にすることができた。