強くて、謙虚で、温かい人(前編)『アメリカンフットボールで培ったパワー』 より続く
ジェフ・ギブスをよく知る人たちは「彼は温和で物静かな紳士だ」と口を揃える。つまりはコート上で見せるエネルギーの塊のようなギブスと素顔の彼は別人だということだ。今回のインタビューにおいても語る口調は終始穏やかで礼儀正しく、優しい人柄が伝わってきた。コロナ禍で中止になってしまったが、ファン投票で3年連続出場を決めたオールスターの話になると「私は口数が多い方ではなくてファンへのアピールも上手ではないが、それでも私を愛してくださるファンの皆さんがいることに心からに感謝している」と、ややはにかんだ表情を見せ、アメリカにいる4人の子どもたちについて語るときはうれしそうなパパの顔になった。だが、「コートの上ではまだまだ若い選手に負けているつもりはない」と言い切った顔は私たちが知る頼もしいジェフ・ギブス。その1つずつを思い出していると、頭の中に『強くて、謙虚で、温かい人』という言葉が浮かんだ。
バスケット選手として、人として、子どもたちが誇りに思える父親でいたい。
── ブレックスはBリーグの初代王者ですが、ギブスさんはファイナルの試合の最後にアキレス腱断裂という大ケガを負いました。あの試合では25得点とすばらしい活躍を見せていただけにショックを受けたファンも多かったと思います。
ケガを負った瞬間、自分ではあれほど大きなケガではないと思っていました。試合が終わって1時間ほど経って取材を受けたんですが、優勝した喜びもあってまだアドレナリンがたくさん出ていましたから痛みもそれほど感じていなかったんです。そのあとに「多分アキレス腱が切れていると思うよ」と言われて、初めて自分のケガの大きさに気づきました。それまで私はあそこまで大きなケガを経験したことはなかったんですね。だから、自分にもこんなことが起きるんだということにショックを受けました。
── それでもそこから再びコートに戻って来るまでの時間が非常に早かった。たしか7か月ぐらいで戦線復帰しましたよね。あの大ケガには驚きましたが、さらに驚かされたのは回復するまでのスピードです。この人は何者!?と思いました
ハハハハハ(笑)。担当してくださったお医者さんが新しいテクニックを使って手術してくれたおかげですね。リカバリーがすごく早くなるような手術だと聞きました。その後のリハビリやトレーニングは自分の仕事ですから、少しでも早くコートに戻れるように自分を追い込んで頑張ったつもりです。リハビリの様子はビデオに撮って定期的にチームに送っていてSNSでも公開されていたのですが、4カ月、5カ月…と回復していくプロセスを見た人から「信じられない」と言われました(笑)。
── 大ケガを負ったとき「自分にもこんなことが起きるんだ」とショックを受けたと言われましたが、歳を重ねていく上でより気をつけるようになったことはありますか?
20代、30代前半の選手たちと同じコートで戦っていくためには自分のコンディションを最良のものにしなければなりません。そのためのトレーニングは常に意識してやっています。また、年齢とともに代謝が落ちてきているのは事実ですから、20代のときと同じ食生活をするわけにはいきません。砂糖や炭水化物は極力取らないようにしていますね。ただ試合の前はエネルギーが必要なので意図して炭水化物を多く取ります。そういうメリハリをつけた食生活は若いときより意識してやっていることです。
── 食べ物に好き嫌いはありませんか?
食べ物については基本的にオープンで、なんでも一度はトライしてみますが、特別嫌いなものはありません。しいて言えば玉ねぎがちょっと苦手ぐらいかな。日本の食べ物では焼き鳥が好きですし、みんなで食べに行く焼肉も好きですね。もちろん宇都宮の餃子もおいしいと思いますよ(笑)