「気持ちよくプレーさせること」を一番に考え、19歳を送り出す指揮官
1月2日、横浜ビー・コルセアーズの特別指定選手である東海大学1年の河村勇輝は、横浜国際プールでのホームデビュー戦に臨んだ。2021人と縁起が良い満員御礼の会場では、販売されたばかりの河村グッズを求めて長蛇の列ができ、一時は入場規制されるほど盛況となる。2021年初戦の滋賀レイクスターズ戦は83-78で勝利し、満員のファンを笑顔にさせた。
試合開始4分55秒、10-10と同点の場面で河村の出番が早くもやってきた。すぐさま森川正明の3Pシュートを演出し、持ち味を発揮する。第1クォーター終了間際、ペイントエリアに走り込むロバート・カーターに対し、閃光の如くキラーパスを通す。声を発してはいけない会場内をどよめかせた。
第2クォーターもそのままコートに立った河村がゲームを組み立て、横浜があっという間に15点のリードを奪う。「たくさんのプレッシャーがかかっている部分もあるが、とにかく自分の役割を果たすことを試合に入るときには伝えました。スピードやピック&ロールでのリードなどが持ち味であり、今日の試合でも7本のアシストを決め、周りの選手を生かすとても良い活躍をしてくれました」とカイル・ミリングヘッドコーチは評価する。19歳の河村に対し、「気持ちよくプレーさせること」を1番に考えてコートへ送り出した。
「何本か打ったシュートは入らなかったが、きっと明日は決めてくれる」というミリングヘッドコーチは、無得点に終わった部分にも期待を寄せる。実際に滋賀との2戦目には7点を挙げた(※チームトップの7リバウンドも特筆すべき点だ)。河村自身も「シュートのタイミングは悪くなかったです」と話しており、あとは決めるだけである。7本のアシストとポイントガードとしてターンオーバーをしなかった点を踏まえ、「合格点ではないかな」とホームデビュー戦を自己評価する。
はじめて横浜のホームゲームの雰囲気を味わい、「たくさんのビーコルブースターが応援に駆けつけてくださって、すごくうれしかったです。その中で勝利をお届けすることができたのは、自分の中でもすごく良かったと思っています」と感謝のコメントを残す。横浜は唯一、プラスチックパネル式のコートを利用しており、「滑る部分もありましたし、ドリブル時のボールがちゃんと戻ってこないこともあり、そこは慣れていかなければいけないと思いました」とホームながら苦労する場面もあった。河村の最大の武器となるスピードを生かすためにも、木製のコート導入を検討する必要がありそうだ。
たくさんの指導者に出会える特別指定選手制度
2001年5月2日生まれ、現在19歳の河村がプロでも活躍できていることは、世界的に見れば珍しいことではない。若年層化が急速に進むNBAでは、2020年ドラフトの上位10人のうち8人が19歳だった。2017年からの3年間は、19歳以下の選手がドラフト指名の5割を超えてもいる。
横浜には20歳のケドリック・ストックマン・ジュニアがおり、1月1日にプロ契約を果たした。しかし河村の加入により、1月2日の滋賀戦はベンチ登録されていない。現在、横浜のロスターは14人いるが、試合に出られるのは12人となる。
「ここ3試合はベンチ入りさせてもらっている限り、先輩たちの分までやらなければいけないという思いがあります。ロスターに入っていること、試合に出られていることが当たり前にならないように、常に感謝の気持ちを持って戦うことで、チーム一丸となって戦うこともできると思っています。自分が入ることによって先輩が出られていないというマインドは、常に持ってプレーしています」(河村)