「今回の移籍について迷う気持ちは一切ありませんでした」── 7シーズン在籍した千葉ジェッツを離れ、信州ブレイブウォリアーズに移籍した小野龍猛は自分の心境について開口一番そう語った。千葉と言えばだれもが認めるB1のトップチーム、対して信州はB1のニューフェイス。「どうして信州に?という質問もたくさん受けましたが、答えはごくシンプルで信州というチームに魅力を感じたからです。僕は今回が2度目の移籍なんですが、いろんな意味で前回のときとすごく似ているような気がするんですよ」。最初の移籍はルーキーとして入団したトヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)から千葉に移った25歳のときだった。
「千葉に入った2013年はチームがちょうどbjリーグからNBLに移った年。正直、今のように強くはなかったし、クラブとしても発展途上にある時期でした。専用の体育館を持つトヨタとは違い、日によって練習場所が異なるといった環境も含めいろんな面でクラブとしての差を感じることも多かったです。ただ、同時に感じたのは上を目指そうというチームの活気。社長の島田さん(現Bリーグチェアマン島田慎二)を筆頭にそういった勢いがありました。そこが今の信州と似てるなあって思うんですね」
そうは言うものの、それまではB2の試合を見る機会は少なく「信州についてはさとたく(佐藤託矢)さんがいることぐらいしか知らなかったです。正直どんなバスケットをするチームなのかも全然知りませんでした」。心が動いたのは勝久マイケルヘッドコーチとじっくり話し合ったときだ。「マイケルコーチは2年に渡り今の信州のベースとなるものを築いてきた人。しっかりしたビジョンと情熱を持ったコーチであり、彼の下でプレーしてみたいという気持ちが芽生えました。また、企業としても千葉と同じ匂いがしたんですね。これからクラブとして成長していく可能性というか、成長してみせるという気概というか。そういうチームならやりがいを持ってプレーできるんじゃないかと思ったんです。やりがいを感じられるのならクラブの大きさは全然関係ありません。僕はトヨタから千葉に移ったときに同じ経験をしているから、さっき言ったようにまったく迷いはなかったです」
信州に引っ越したのは6月末。コロナの影響もあり当初は6人ほどで練習する日が続いたが、その中でもプレー面での不安は感じなかったと言う。
「マイケルコーチの指導は細かくて、頭を使うバスケットを求められます。これは予想どおりというか、選手として学べるものも多々あって充実した練習ができていると思います。昨シーズンまでB2に所属していたとはいえ決してメンバーのプレーのレベルが低いわけではない。その点については全然心配していないんですよ。ただメンタル面で言えば、やっぱりB1にはタレントが揃っているし、その中で揉まれることで鍛えられるものがあると思うんですね。そこはずっとB1でプレーしてきた選手の方が長けているかもしれない。僕の役割の1つはそういったメンタルの部分で助言をすることだと思っています。助言っていうとちょっと偉そうですが、B1で揉まれてきた者として伝えられることがあるのならそこはしっかり伝えていこうと…」