語る口調に熱が帯びる。確かに自分の意識のすべてが『37歳にして変わった』というのはすごいことだろう。が、さらにすごいのは、15年プロの舞台でバスケットを続けてきた選手がなんのてらいもなくそう言い切れることだ。城宝の笑顔を見ていると、年齢は符号に過ぎないような気がしてくる。選手はいくつになっても変化し、進化できるのだから。符号の数字が1つ増え38歳になった今年は選手と兼任する形で『テクニカルアドバイザー』に就任した。任されたのは富山のユースチーム(U12、U15)の指導と週1回担当するスクールのコーチ。「チームの練習が終わってからユースの練習を見に行くのは体力的に結構大変ですよ。でも、若い子たちは飲み込みが早い。教えたことが身になっていくのを見るのは楽しいし、やりがいも感じます。あとね、やっぱり若い子たちを指導する以上、教えたことは自分もしっかりやらないとなあというのはあります。城宝さん、ダメじゃんと言われないためにも(笑)」
今シーズン、新ヘッドコーチとして浜口炎を迎えた富山は、ジュリアン・マブンガ、橋本晃佑、岡田侑大といった有力選手の移籍加入もあり注目されるチームの1つに挙げられている。ベテランの目にはどう映っているのだろうか。
「マブンガを除いた外国籍選手がまだ合流していないので、正直、現時点でチーム力を占うのは難しいですが、それでもすばらしい選手が集まったのは間違いありません。今いる日本人選手だけを見ても今シーズンはやれるんじゃないかという手ごたえは感じますね。京都ハンナリーズの柱として活躍したマブンガは(浜口)炎さんのバスケットをよくわかっていますからその点でも不安要素はないし、最初からやってくれそうな気がします。ベテランとしての自分の役割はしっかりチームをサポートすること。とは言え、選手である以上試合には少しでも多く出たいですね。コートに立って勝利に貢献して、城宝はまだまだ元気だぞ!というところを見せたいです」
そのためにはこれまで以上に入念な身体のケアも必要になるだろう。
「ケアはもちろん重要ですが、自分としてはそれほど身体の衰えを感じていないんです。そりぁ若いときと比べれば体力は低下しているだろうし、疲労の回復にも時間がかかる。でも、筋力は衰えていないと感じています」
聞けば、38歳で現役選手としてプレーすることは想定内だったらしい。
「そうですね。プロ選手になったときから自分は40歳ぐらいまで現役でやれると考えていました。なので、38歳は想定内(笑)。これから先のことはわかりませんが、自分が求められる限り頑張っていきたいと思っています」
試合があるときは、妻に連れられて3歳になる長男も必ず会場に来るという。「自分の父親がバスケットをやっていることはもうわかっていますね。だけど、会場に来ても試合は全然見ていないみたいで(笑)。もう少し大きくなれば興味も出てくるんでしょうが」
いつか観客席に座った息子が「パパ、がんばれ!」と声援を送ってくれればうれしいと思う。コートの上で息子の大きな声を聞いてみたいと思う。あと1年、あと2年…その声を聞きたいと願うのは私たちもまた同じだ。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ