スポーツ業界の在り方を変えていく取り組み
瀬戸内海にある人口約2万7千人の小豆島。オリーブが有名なこの島に、昨春から活動をはじめたプロバスケクラブがある。「大阪城の築城に使われるなど、いまだに大規模な採石場が残っています。チーム創設時にちょうど石に関する記念行事があり、前代表が小豆島の文化に目を向けました」と丹生茂希GM代行は、チーム名の由来を語ってくれた。昨年3月、『諦めきれないヤツは島に来い』というキャッチコピーでトライアウトを実施。「石ころ根性やいろんな形の小さい石を集めれば大きくなる」という思いが、小豆島ストーンズの名に込められている。
新たに作られたプロクラブならば、昨今はBリーグ参入を目指すのが当然である。しかし、「スポーツ業界の在り方を変えていく取り組みができれば良い」という丹生GM代行の言葉どおり、異なる道を耕しはじめた。
「バスケの最頂点がBリーグというのが、スポーツのレベルで示される今の形です。スポーツに携わるビジネスではなく、スポーツを生業にすると考えたときに、けっしてBリーグだけが全てではないと感じています。選手寿命が短い中、引退後もスポーツで一生ごはんが食べられる形をどうすれば作れるのかを常に考えています。これから時代がすごく変わっていく中で、『ローカルプロ』というスポーツの在り方、チームや団体としての在り方というところに、何か自分たちが思い描いた形を作っていければ良い。選手たち自身が掲げた目標に対し、小豆島ストーンズを通して達成しながら、いろんなバスケでの生業を見つけて生きていけるようにするための取り組みです」
プロクラブとしてスタートしたが、「そんな簡単なものではなく、常にギリギリの状態なのが正直なところ」だそうだ。ソシオ制度を用いた島民クラブとして、「みんなの小さい気持ちで支えてもらえれば、チームがなくなることはないのではないか、という発想が設立の原点」であり、企業の支援だけに頼ることのない運営を目指している。
「コミュニティが小さい分、情報が広まるスピードは速く、島民のいろんな方々に支えられて良いスタートを切れたと思っています。入会金5千円/年会費5千円というソシオの金額は、高校生でもクラブオーナーになれるという思いで設定しました。意外にも、島外の人に興味を持っていただいていることがおもしろいです。有名企業や元サッカー日本代表監督の岡田武史さん(現FC今治代表取締役)もオーナーになってくれています」
『夢中のキッカケをつくり続ける』というのが、小豆島ストーンズ創設のキッカケとなった小豆島スポーティーズの理念である。丹生GM代行は小豆島スポーティーズの代表も務め「どんどんチャレンジする人が増えればおもしろいし、それを間近で見た子どもたちにどんな影響を与えるのかが楽しみです。双方にとって良い経験ができ、『がんばればみんなできるんや』みたいな影響が、この地域に派生していければ良いですね」
小豆島ストーンズは、夢や目標を叶えるために努力する場である。そこに集まってくる選手たちは、「Bリーガーになりたい」「指導者になりたい」「田舎でバスケがしたい」など動機はそれぞれだ。「いろんな思いを実現できるようなチーム」を目指す小豆島ストーンズが、今後どのような形になっていくかを楽しみにしたい。
part2「真剣に、夢中になれる環境で見つける天職(小豆島ストーンズ #29 橋本翔平)」へ続く
文 泉誠一
写真 小豆島ストーンズ
画像 バスケットボールスピリッツ