── で、3本決め切ったんですか?
はい。3本決めて延長戦に持ち込みました。結果からいうと、延長で負けてしまったんですが、自分としてはあのフリースローを決め切ったことで何かが変わったと思うんですね。1つ殻を破れたというか、次の試合から何事にも緊張することなく冷静にプレーできるようになりました。冷静になったことで視野が広がったような気がします。おかげで自分のパフォーマンスが向上していく手ごたえを感じることができました。
── 選手としてのターニングポイントでもあったわけですね。
そう思います。自信を得たことで成長できたというか。もちろん試合中にまだあわてることはありますよ。相手を見てプレーすることは結構できていると思うんですが、あとから「あそこはもっと落ち着いて(プレーを)選択するべきだった」と感じることは多々あります。オフボールのときもそうですし、ドライブからの判断とかもそうですし。『より冷静な判断力』が自分の課題だと思っています。
── たとえば試合でミスした場合、三ツ井さんは結構引きずるタイプですか?
結構引きずるタイプですね。性格的に“気にしい”なところがあるので、ドーンと落ち込むこともあります。ただ、これはもういろんなところで記事になったりしているので知ってる方も多いと思うんですが、東海大には『24時間ルール』といって、試合に勝って喜ぶのも負けて落ち込むのも24時間だけ、翌日には気持ちをリセットして次の試合に向かうおうというリクさん(陸川章監督)の教えがあるんです。僕はプロになってからもその教えを実行してきました。ヘマした日は何が良くなかったんだろう?とかなんであのプレーを選択したんだろう?とかめっちゃ考えるし、とことん落ち込むんですよ。でも、日付が変わったら切り替えることができます。
── そんなにパッと切り替えられるものですか?
切り替えられます。それをずっと習慣としてやってきたから、夜までへこみ続けていても、日付が変わったら「よし、次の試合は頑張るぞ」と思えるんですね。きっと24時間ルールが脳内に染み込んでいるんです(笑)。
── 同じく24時間ルールが脳内に染み込んでいるであろう東海大の同期とも今シーズンは同じステージで戦うことになりますね。
はい。やっと同じ土俵に上がることができました。伊藤達哉、寺園脩斗、関野剛平(サンロッカーズ渋谷)、中山拓哉(秋田ノーザンハピネッツ)、それと今季から新潟に入った大矢孝太朗。僕たちの代は際立ったスーパースター的存在はいなかったんですが、その分どの代よりも泥臭いプレーに徹して切磋琢磨してきた自負があります。4年のインカレ決勝は自分の中で忘れられない試合の1つなんですけど、なんで忘れられないかというと、あの年はチームとしてすっごくハードにトレーニングして、ほんとにこれでもかというぐらいみんなで頑張ったんです。だけど、勝てなかった。あんだけやったのに勝てなかった。その悔しさは4年生全員が経験しているんですね。自分がそうであるようにあの経験はプロとしてプレーする上でみんなの中に絶対生きていると思います。そう思うと、ようやくあいつらと同じコートで戦えることになったのが余計うれしくなりますね。会場で会ったら、多分「おお」とか「元気かよ」とか声を掛け合うだろうし、今まで(B2にいた)自分だけできなかったそういうことが今シーズンはできるんだなと思うと、なんか楽しい気持ちになります(笑)
part3「『秘かに“長野バスケ大使”を狙っています(笑)』」へ続く
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ編集部