成長期でもあるこの世代ゆえに、どの選手にも全てのポジションを覚えるよう指導する。身長差があっても積極的にマッチアップさせ、それぞれの長所と短所を気づかせることを重視する。指導内容はトップチームのスタイルを踏襲しているかと思えば、「当然トップチームはヘッドコーチが代わっていきますし、その度にバスケ自体が変わります。ですので、世界で戦うにあたって日本人に何が求められているかを私自身もしっかり吸収しながらユースチームに落としています」。唯一、同じメニューを行っているのがディフェンスであり、ハードにコンタクトすることを徹底させている。
Bリーグには特別指定選手制度があり、初年度から高校生がプロのコートに立ち、その可能性を示してきた。北海道のU18ユースチームではトップチームへのコールアップシステムを採用、最年少B1選手の記録更新にも期待が高まる。この夏休み期間中にはU15チームから、トップチームの練習に参加する選手を輩出した。「最初は頭がパニックになっていましたが、ある程度はすんなり練習に参加できているという印象を受けています。当然フィジカルの差はありますが、コンタクトの部分に関しては嫌がらずにしっかりできていると見受けられます」と齋藤コーチは評価する。ユースチームの指導方針が功を奏し、トップチームの練習でも学んできたことが発揮されている。
「見て学ぶ環境としては最高です」
ユースチームとバスケットボールアカデミーのデベロップメントアドバイザーに、昨シーズン限りで引退した折茂武彦が就任した。すでに練習に参加する機会があり、「U15チームの選手たちは緊張し過ぎていました。異次元の世界の人が来たみたいな感覚で見ていましたね」というのがファーストコンタクトだった。折茂アドバイザーに対し、「世界での経験値。国際試合では当然、身体能力では敵わなかった部分をどう考えて、どう解決して、実行に移したのか。彼らがなかなか経験できないことを、直接伝えてくれるのは選手にとっても大きな刺激になりますし、受け取った選手の財産にしてほしい」と齋藤コーチは期待している。
昨シーズンまではU15チームの練習に松島良豪選手(現CCO)が頻繁に顔を出し、選手たちから「師匠」と呼ばれるほど良い関係を築いていた。手の届くところに最高の手本があることが、Bリーグが持つユースチームの大きなメリットだ。
「トップチームの試合映像を見せるだけでも、選手たちは刺激を受けています。トップ選手が来て、実際にその動きを見せてくれることで理解度はさらに高くなります。それが、今後のBリーグのユースチームの強みとして形になっていけば良い。見て学ぶ環境としては最高です」
(現在13〜15歳の)選手たちにとって、地元のプロクラブは憧れの存在だ。プロ選手になる夢へ向かって一歩近づくことを実感できるのも、ユースチームの存在意義である。「育成に強いレバンガ北海道にしよう」と、ユースチームからトップチームや海外リーグへ輩出する選手育成を目指す。ユースチームだけではなく、若い選手が増えたトップチームも同じ目標を掲げていた。
ユースチームは狭き門であり、活躍できる選手は限られる。しかし、アカデミーやクリニックを通じて、「考えることやイメージすることの重要性をしっかりと伝えていきたいです。そこで教えたことが北海道全体に広まり、ベースとなるものがレベルアップしていくことにも貢献したい。プロを目指す糧にしてもらえたら」という齋藤コーチは、『育成に強いレバンガ北海道』のメソッドを広大な道内全域へ届けていく。
文 泉誠一
写真 レバンガ北海道
画像 バスケットボールスピリッツ編集部