宮田選手はアメリカでプレーするために自ら編集したビデオテープを送り、トライアウトに参加。そのチャンスを見事につかみ、アメリカ独立プロリーグABAのオンタリオ・ウォリアーズの一員としてコートに立った。海外でのプレーは一筋縄ではいかないことも多い。就労ビザが下りず、バスケとは違う理由でシーズンを全うできずに終わってしまった。しかしその後、無名だった宮田選手は名門・トヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)への入団が決まったときは驚かされた。どんな環境であっても諦めず、バスケを止めることなく突き進んできたからこそ道が拓き、42歳になった今なお東京エクセレンスで元気に楽しく現役を続けている。
『スポーツを止めるな』は野澤代表理事らが高校3年生たちのプレー動画をSNSにアップしてもらい、それを大学のコーチとマッチングさせる「#ラグビーを止めるな2020」からはじまった。宮田選手の経験談こそ、今の学生たちに届けたい。
「映像を送っても成功するかどうかを考えて動かない人が多いですが、そうではありません。映像を作ることで自分自身のことがよく分かります。熱心さが伝われば、必ず見てもらえます。今、僕のところにもいろんな学生から映像が送られてきますので、その感想やアドバイスをフィードバックしています。行動することで得られるものも多く、それはバスケ選手として成長するプラス面だけではありません。相手とコミュニケーションを取りながら自分を売り込み、発信していくことで社会性を磨くことができます。脈がありそうだからではなく、ゼロから動くことにこそ意味があります」
最初の上映会は静岡の強豪校対決となったが、知名度で選ばれたわけではなく「この活動に賛同して声を挙げてくれたからです」。今後の募集についてもそのレベルは不問であり、試合映像は大会や練習試合だけではなく、練習中の紅白戦をこれから撮って応募しても構わないと宮田選手は考えている。
「スポーツに懸けてきた3年間を、何かの形に残して欲しいです。親御さんや友達など応援してくれる人たちにとっても、大会が中止になったことで見られなかった最後の試合を、このような形で一緒に見られるのはうれしいじゃないですか。勝ったから良いではなく、目標に向かってがんばっていた過程こそ、胸を張って言えることの方が大事。高校生は全員が成長過程にます。いろんな人に応募してもらいたいし、みんなの形を作ってもらえたらうれしいですね」
すでに引退し、受験など次のステップに進んだ3年生たちだが、この夏休み中にもう一度チームに戻って仲間たちと一緒に思い出の試合映像を探したり、新たに作ってみてはいかがだろうか。最後の大会への出場が叶わなかったからこそ、今ある環境でのバスケに「区切りをつけることも大事」と宮田選手は訴え、そのきっかけを用意した。自分自身を納得させながらその魅力を再確認し、今後もバスケを止めない人たちが増えることを願っている。
スポーツを止めるな『#バスケを止めるな』
https://spo-tome.com/
文 泉誠一
写真 一般社団法人スポーツを止めるな、泉誠一